赤城side
拠点のラウンジ。
ソファに座って、
缶を開ける。
プシュ。
いつもの音。
いつもの時間。
……のはず。
向かいで、
イッテツとあなたが
カウンターの方で立っている。
距離は、
前と同じくらい。
でも。
空気が、
違う。
僕が声をかける。
二人とも、
一瞬遅れて反応する。
被らない。
前なら、
被ってた。
……あれ?
あなたは、
イッテツを見ない。
イッテツも、
あなたを見ない。
同じ方向を向いてるのに、
視線だけ、
交わらない。
冗談っぽく言う。
またタイミングがずれる。
ほんの、
一拍。
缶を持ち替える。
視界の端で、
あなたがベルトを触る。
指で、
弾きかけて、
やめる。
……やめる?
前は、
気にせずやってた。
イッテツも、
気づいた顔をする。
でも、
何も言わない。
聞いてみる。
二人とも、
首を横に振る。
同時に。
それだけは、
合う。
答えは返ってこない。
二人から離れて
遠くのソファに座る。
二人とも、
お互いに
気づいてないな…
マナが横から来る。
視線の先。
並んでるのに、
別々の場所にいるみたいな、
あの感じ。
イッテツが、
一瞬だけ、
あなたを見る。
あなたは、
気づかない。
その視線が、
宙に落ちる。
マナが、
肩をすくめる。
ラウンジは、
いつも通り。
笑い声も、
ある。
なのに。
あの二人の間だけ、
音が、少ない。
何があったか知らないけど
二人はすれ違ってる。
それだけは
第三者視点でも
わかる。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!