パリン!
力も何も加えていない
本当に何もしていないのに
私の手のひらにあったのは不自然に割れた鈴だった
さっきみたいに妖力を打たれたわけでも負荷を与えた訳でもなかった
ほんとに突然、割れた
でも、私が気今にしなきゃいけないことって絶対に鈴じゃないよね…?
恐る恐る後ろを振り向いてみる
さっきまでコソコソ様子を伺うだけだった妖怪たちが目の色を変えてこちらを見ていた
ひたすら恐怖に震える中でも叫べるようになっただけ成長じゃない?と頭のどこかで呑気な囁きが聞こえる
あいつらが動き出したら終わりだ、必ず喰われる
恐怖で震える足を何とか動かして私はどこに行くでもなくひたすら逃げた
何体かの小さな塊が私に飛びついたのを手ではらいながらひたすら走る
いけるかもしれない、そう思いながら角を曲がった瞬間私の思いは一瞬で砕け散った
見た目はクモみたいだ、でもサイズ感が明らかに違う
廊下の半分以上がそいつで埋め尽くされていた
急いで元来た道を全力バックしていく
後ろからカサカサという移動音が聞こえる
…絶対に追いかけてきてる、てか足音キモイ!
圭がいたら鈴が壊れてもこんな目に合わなかったかもしれない
今になって1人の不安と圭と離れたことへの後悔が押し寄せてきた
正直足も限界に近い…
なのに後ろを振り向けばあの化け物がいる
しまったッ…足がもつれて………
やばい腰が抜けた…どうしようもう近くに迫ってきてるのにッ!
ひたすら意味のない言葉が出てくる
カサカサッカサ…
もう食う準備は出来たとばかりに怪物は口を開けだした
喰われるッ…怖い……怖いッ…!
あれ?衝撃がない?
自分に来たのは食べられる衝撃の代わりに誰かに抱き上げられた浮遊感だった
そこに居たのは私を抱き上げてひたすら走るコウくんだった
圧のかけ方が怖いよぉ…
今までで見たことの無いような笑顔を浮かべているのがさらに怖い
一気に説明したその声には明らかな怒りが見て取れた
へぇ、蜘蛛って柑橘系に弱いんだ
だって、一番さんは七不思議には弱い妖怪も近づけないって……
1度腰が抜けてたこともあって恐る恐るたってみたが特に支障はない、これなら走れる
あれから私たちは無我夢中で走り続けた
少し大きな妖怪が出てきてもコウくんがすぐに何かと妖怪の嫌うもので追い払ってくれた
少し目を見開いたあとコウくんはそういった
そういうコウくんの耳は真っ赤だ、きっと日頃からお礼を言われる機会が少ないのだろう
今度は心底不気味なものを見るような顔で見てくる
でも、そこまで褒められ慣れていないものだろうか…?
いくら見た目が幼いとはいえ、何かしたら親に褒められるなどのことはあったはずだ、コウくんは知識も豊富だからそういうことで褒められることもあっだろう
それとも彼は案外褒められたり感謝されるようなことをしない親不孝者だったのだろうか…?
この子達に関しては謎が深まってくばっかりだな…
いつかこんなことも気軽に聞けるのだろうか
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!