幼い頃から、運動することが好きだった。
「何処に出かけたい?」と聞かれると、必ず「アスレチックパーク」と答えていたらしい。
私には、父と母、そして、双子の姉がいた。
姉は、いつも私に優しくしてくれた。喧嘩なんて殆どしなかった。
利他主義な私を責めることは1度もせず、ありのままで受けいれてくれた。
その日もまた、休みの日だからと出掛けていた。
その日も、家族でアスレチックパークへと、遊びに行っていた。
普段と変わらず、「咲良〜。すごいね〜。」と言ってくれる父と。
「心桜も凄いわね〜。」と言う母と
「咲良と私は凄いんだからね!!」と威張るように言う姉が居た。
何時も通りの何気ない会話が"当たり前"だと思っていたのも束の間、"事故は起こった"。
キキーッ ドゴン
幸い、私の命は助かったものの、父と母と姉は、搬送先の病院で亡くなった。
私は、5歳だった。たった5年で、家族を失ったのだ。
泣いた。沢山泣いた。恐らく、あれほど泣くことは無いという程。
大好きだった。家族が大好きだった。
何より、大切な人達だった。
あの一瞬で、私から奪い去った。
何も考えられなかった。
その後は、お父さんの兄へ、叔父さんの所へ引き取られた。
叔父さんは、幼くして家族を亡くした私を割れ物のように優しく接してくれた。
叔父さんは、お父さんより、年が上なはずなのに、若い人のように、体を自由自在に動かしていた。
私は、叔父さんの元で、今迄の生活通り···とは行かないけれど、楽しく過ごしていった。
あれは、7歳の頃だったと思う。
初めて"アレ"を見たのは。
心底思ったのが、「自分がミライを見ているのでは無いか」と。
その日、家に帰り、叔父さんに見えたものの話をした。
その見えたものが、その通りに、なった事も。
あれから、何年が経っただろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。