調理実習が始まり今日はクッキーを作るというのが課題になった。
クッキーは小さい頃何度も何度も作っていたお菓子。
だからなんとなく作れる気がした。
お皿に並べられた様々な形をしたクッキー
材料を無駄にしないため頑張り他の班より多くできてしまった為、ラッピング袋に入れられたものも数個ある。
………何を考えているのだろうか…。
どうせ捨てられるだけだ…。
……いや違う。
なんだろう…こんなの知らない………。
素直に夾兄といえばいいものの、
何故か嘘をついてしまう。
何からも逃げる癖は昔からだ。
でも…私なんかより透さんがあげたほうがきっと喜ぶ。
夾兄の反応を見ていたらそんなのすぐにわかった。
由希だってきっとそうだ。
会いたくない…今1番会いたくない人達…。
夾兄は私をちらりとも見ずにそのまま透さんの方へ進む。
それを見た由希が私が追いつくようにペースを落とす。
鞄の中から手に持っている袋とは別に袋を出す。
きっと手に持っていた袋に気づいてたはずだ。
だが由希は知らないふりをして私が開けた袋から1枚クッキーを取り出した。
前から思っていたけど…と付け加え、
手に取ったクッキーを食べる。
私と由希はそれから特に会話はせず
静かに家へ帰った。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。