目覚めたのは救急所だった
男は手紙を差し出してきた
見たことある…ような字体で、
大好きなレイへ、と書かれていた
正直怖かった。誰かも分からないやつからの手紙で、
大好き、なんて書かれてて。
気持ち悪い…とも思ってしまった、
だが俺は受け取った。
受け取らないと…と思ったんだ
男は去り、俺は部屋に一人になった
涙が…流れていた
泣くような事を言われたわけでも
痛みがあるわけでもない…
泣き止もうとすればする程涙は止まらなくなる
拭っても拭っても止まらない涙に戸惑い
何かを忘れてしまった気がする自分に腹が立ち
何かが聞こえた
もちろん、外は祭りの後片付けで忙しいから
音なんか溢れている…けど、それとは違う
頭が…痛い…
言葉が耳に入ってこない
酷いノイズ音が邪魔をする
痛い…痛い痛い痛い…
俺は駆け出していた
名前も知らない女の子が俺の名前を呼んでいる
あんな小さな子を無視するなんて俺は最低だ…
だが今は逃げたかった
あの場に…居たくなかった
肩で大きく息をする
呼吸が上手くできない…苦しい…
堤防に座り、状況を整理する
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。