私は璃乃ちゃんを部屋に連行した。
顔を赤くしながら璃乃ちゃんは私から慌てて目をそらした。
──証拠なんて考えればいくらだってある。
璃乃ちゃんが諦めたようにすっと立ち上がった。
璃乃ちゃんはそっと私の部屋から出ていった。
さらさらな髪の毛が、どこか切なそうに揺れていた。
すると、お兄ちゃんは風のような速さで現れた。
お兄ちゃんは璃乃ちゃんの手をぎゅっと握った。
璃乃ちゃんはずっとぷるぷる震えている。
お兄ちゃんが固まった。
たった今お兄ちゃんは、自分が、彼女でもない女性の手をしっかりと握っていることに、ようやく気づいたのだろう。
お兄ちゃんの後ろには先輩が立っていた。
私と目が合うと、私に向かってガッツポーズしてくれた。
お兄ちゃんがいなくなった直後、璃乃ちゃんが私の肩をわさわさとゆすった。
璃乃ちゃんの動きが時が止まったように止まった。完全に図星みたいな顔だった。
しかし璃乃ちゃんはそう簡単に認めない。どこまで頑固なんだ。
だって、璃乃ちゃんは私と話しながらずっと、お兄ちゃんに触られた手首を撫でていたんだから。
璃乃ちゃんは初めて声を上げた。
驚いた。いつもは冷静で静かなのに。まあ、私が悪いんだけど。
お兄ちゃんの横には、ぺろっと舌を出す先輩がいた。
お兄ちゃんはまた風のように走り去っていった。
その途端、璃乃ちゃんが手で顔を覆いながら私のベッドに倒れた。


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!