(現在/原さん視点)
原は、あの部屋で確信した。
救おうとしてはいけない、と。
「廉。これは……」
「原さん」
廉は即座に遮った。
だが声は低く、丁寧だった。
「あなたは、大丈夫です」
「以前より眠れていますし、混乱もありません」
「それが正しい状態だと思っているのか?」
廉は首をかしげた。
「正しい、ではありません」
「必要な状態です」
原はあなたを見た。
視線は廉から離れない。
問いかけても、答えは返ってこない。
原が一歩近づくと、廉が自然に間に入った。
触れない距離。
しかし、完全な遮断。
「原さんは、優しいです」
「でも、この人に“選ばせる”のは残酷です」
「……それでも、人は───」
「選択は、負担です」
廉は、はっきりと言った。
「この人はもう、その段階を越えています」
原は、何も言えなくなった。
最後に見たのは、
廉の背中に隠れるように立つあなたと、
その袖を、無意識に掴む指だった。
助けを求める力すら、
もう、残っていなかった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!