第9話

. 最期の景色
33
2026/01/29 04:41 更新
(現在/原さん視点)





原は、あの部屋で確信した。

救おうとしてはいけない、と。






「廉。これは……」

「原さん」






廉は即座に遮った。

だが声は低く、丁寧だった。

「あなたは、大丈夫です」
「以前より眠れていますし、混乱もありません」

「それが正しい状態だと思っているのか?」


廉は首をかしげた。

「正しい、ではありません」
「必要な状態です」

原はあなたを見た。

視線は廉から離れない。
問いかけても、答えは返ってこない。

原が一歩近づくと、廉が自然に間に入った。
触れない距離。

しかし、完全な遮断。

「原さんは、優しいです」
「でも、この人に“選ばせる”のは残酷です」

「……それでも、人は───」

「選択は、負担です」


廉は、はっきりと言った。

「この人はもう、その段階を越えています」

原は、何も言えなくなった。
最後に見たのは、

廉の背中に隠れるように立つあなたと、
その袖を、無意識に掴む指だった。


助けを求める力すら、
もう、残っていなかった。

プリ小説オーディオドラマ