流星side
“はーーーいっ”
いつものように、全員での雑誌の撮影。
個人の撮影、ペアの撮影も終わり…
最後は全員で。
身長順かぁ。まあ僕はいつも一番後ろやし。
そう思ってトコトコ後ろをついていくと…
ふいに丈くんに飛び止められる。
…
身長を抜かして…る?
そんなはずは…
やだっ、そんな…抜かすなんて
みたくないっ。
そんな気持ちも知らずに
あれやあれよと並べられて…
頭の上に平らなものを乗せられる。
そして…
…。
抜かしちゃったんだ。
…
別に大きくなることが悲しいわけじゃない。
グループで一番小さいことへのこだわりもない。
だけど…。
あの言葉、今でも本当だったら…どうしよう。
…
僕の後ろに大ちゃんが周り、背中からギュッとバックハグをしてくれる。いつもなら嬉しくてたまらないけれど…今だけは心臓の音が聞こえないか心配になる。
ドキドキ…
どうしようって。
ダメだっ、大ちゃんの言葉が…
全て偽りに聞こえちゃう。
こんなに気持ちになりたくないのにっ。
早く撮影終わって…。
今日は帰らせてっ!!!
…
撮影が終わり、明日の仕事が早いから!と嘘をついて
僕は一番にスタジオを出た。
あんな気持ちになったのは
…
“身長抜かしたら、好きじゃなくなる”
大ちゃんが昔、ふいに僕に言った言葉のせい。
Jr.時代、小学生の頃はあんなにあった身長差も中学、高校となるとほんの僅かになるほど、僕は成長した。
そんな僕をみて、大ちゃんが言った言葉。
この言葉のせいで、何かの呪いがかかったかのように
それ以来…身長は伸びることなく、大ちゃんよりも僅かに小さい僕を保っていた。なのに。
…まあ、もう昔のことだしっ!
…あの言葉、冗談で言ったつもりだと思ってる。
冗談に決まってるっ!!
けれど、僕の方が大きいのが現実になると
本当に好きじゃなくなっちゃうのかな…って
今までみたいに
大ちゃんから甘える事がなくなるのかなって
不安に押しつぶされそうになった。
…
それから、僕は全員での撮影や大ちゃんと一緒の撮影が怖くなってしまった。
前の日になると、無いことばかり考えてしまうから。
そして、自分を守るように、自然と距離をとるように、並ばないように…体が反応し始めていった。
次の撮影日。
…楽屋に入るといつも通りのみんな。
そして数人ずつカメラの前へと呼ばれていく。
ドキドキしながら待っていると、本当に運が悪いのか
今日は大ちゃんとみっちーとの3人での撮影。
でも、みっちーがいるなら間に挟んで撮影をすれば…そこまで気にしなくても大丈夫なはず。
…大丈夫。
落ち着け、僕っ。
そして3人が呼ばれてカメラの前に立つ。
よし、これで大ちゃんと並ばなくて済む。
そしてちょっとだけ膝を曲げて…
なるべくみっちーの身長が目立つように。
…パシャッパシャッ
…パシャッ
座れば身長なんて関係ない。
僕は大ちゃんの隣に座って、なるべく猫背にして
くっついてみる。
…パシャッ
…パシャッ …パシャッ
そして、カメラマンさん…というよりは
ほぼ僕が指示を出して、撮影は終わったのだった。
…
…
はぁっ。
でも毎回こんなに気を使うと…気疲れしちゃう。
でも自分の気持ちを落ち着かせるために頑張らないと。
…
この時の僕はまだ、あの言葉の呪いの威力をそこまで感じていなかった。
全員での撮影もなるべく距離をとって、大ちゃんの隣に呼ばれそうな時は自分から立ち位置を提案してわざと離れて…を繰り返していく僕。
今日だけじゃなくて、次も、その次の動画撮影も。
僕は…大ちゃんより大きくなったらダメなんだって。
大ちゃんも僕と並ばなくなったからか、もう身長の話はすっかり忘れたようで、いつも通り。
もう少しだけこれを続けたら完全に忘れてくれるはず。
だから…後ちょっと。頑張らないと。
あとちょっと…。
そんなことを考えていた夜。
1人での仕事を終えて、マネージャーさんの車で家へと帰る僕。そんな時…
僕は早速SNSを覗いてみる事に。
褒められている時にしか見ないようにしているため、久しぶりのファンの人達の反応を見ることができて、すごく嬉しかった。
ふむふむ…
【本当に可愛すぎる!】
【恋やけどめ、まってましたーっ!!】
【早くもっと動画アップしてっ!!】
ふふっ。すごい、みんな喜んでくれてるやん。
嬉しすぎるっ。
やっぱり大ちゃんとの大西畑動画は人気やなぁ…。
僕だってまた大ちゃんと一緒に動画撮りたいなぁ。
…でも今は…。
…。
そう言えばどんな動画が上がったんやろ?
恋やけどめも何十回と動画を撮ってるため、いつ撮ったものが上がったのか確かめてなかった。
確認してみると…
目の前に映った動画は
ライブの裏方で撮った動画。2人並んで笑顔で踊っているなんて事ない動画…だったのだが。
アングルからなのか、それとも靴の問題なのか。
僕の方が明らかに大きく見えている。
後ろの背景も黒い布のため、2人の体だけが浮き上がり、
余計に体の大きさがくっきりと映し出されていた。
…本当に僕の方が…大きいんだ。
で、でも!僕の錯覚かもしれないし
コメントにはそんな事…
と思ってSNSやコメント欄をもう一度確認してみると…
【りゅちぇ、大きくなった?】
【大ちゃん抜かしてるっ!!!】
【えっ、本当だーっ!!】
やばい…気づかれ始めてる。
そして、しまいには
【あの言葉…本当にならないといいね。】
と言うコメントと共に…僕が大ちゃんから身長のことを言われて気にしている、昔の動画が添付してあった。
…
やめてっ
見たくない。
なのに勝手に指が…動画の再生ボタンを押してしまう。
ピッ
…ピッ!!!
嫌っ!!!嫌やっ!!!!
はぁっはぁっ…
汗が止まらないっ。
落ち着け、落ち着いてって。
大丈夫…大丈夫っ!!!!
そう念じているのに…冷や汗が止まらない。
体が震えている。
あんな言葉、嘘なのにっ!!!
その後会えに帰ってからも、どこか落ち着かなくて
そわそわしてしまう。
そして見たくもないSNSを見て…また不安に陥る僕。
【りゅちぇ成長期だね!】
【もっと大きくなりそうだけど!】
【大ちゃんに上目遣い…できなくなるね】
…早く誰か嘘だって言って?
大ちゃん…大きい僕も好きって
言ってよ。
じゃなないと…ダメに…なっちゃいそう。
そんなことを考えて…
SNSのコメント欄を見ながら、僕は寝落ちしてしまったのだった。
西畑side
レギュラー番組の撮影日。
いつものように楽屋に入ると、いつもじゃない光景が目に入る。
いつも早い入りの流星がおらん。
…流星が休むってことは、よっぽどの事やん。
レギュラー番組なんて一気に3〜4本取りのため、1日休んだら1ヶ月ほど番組には映らへん。
そんな日に休むってことは…
本当に体が起き上がらないほどの事や。
流星はプロ意識が高く、仕事熱心やから
ちょっと熱があるくらいじゃ体を引きずってでも出てくるから。
それもあかんのやけど。
…
…なんやろ。
心配ってよりも、
なんかこのままじゃダメや…って思ってしまう。
上手く言えないけれど
心配だけじゃ片付けられないような事になりそうで…
すぐにでも家に向かいたかった。
そう思っていても、仕事は仕事。
俺の気持ちそっちのけで、時が流れていく。
流星のいない収録はどこかやっぱり慣れなくて
身が入らない。
そんな気持ちを隠すかのように自分から
なんて言って場を盛り上げたりしたけれど。
気持ちの整理はつかないし、空回りしてばかり。
こんな時…流星なら笑ってくれるのになぁって
寂しさは増すばかりだった。
…
…楽屋にて
そう言って見せてきたのは、ツアー中に流星と2人で撮ったSNS用の動画。
これが昨日配信されて、ファンの中でバズっていたらしい。
“恋やけどめ”を配信すると必ずと言っていいほど盛り上がるし、毎回トレンド入りするほど。
それだけ2人の魅力が詰まった歌であり、俺にとっても大西畑にとっても、大切な曲だった。
…改めて見ても
流星…可愛いなぁ。
…??
そうやったっけ?
…確かにそんな事言った気はする。
その後、丈くんが当時の動画を見つけて、俺に見せてくれた。
俺に向けて、流星が手紙を読んでくれた時の動画。
その中にちゃんとその証拠が残っていた。
…
こんな事言ってしまってたんや。
…もう流石に気にはしてないだろう。
流石にな。
…俺の言葉…。
そんなに流星に影響を与えるのか?
思い返せば…
俺が過労で倒れそうになった時も
流星がおかしくなりかけた事があった。
俺にイタズラをして、1週間無視した時も
お腹を下してご飯が食べられなくなった。
…
今回の体調不良って…
…まさかな。
…
…
そうや。流星のことは、メンバーの中でも1番よく分かっているつもりや。
だからこそ、今…みんなで押し掛けてはいけない。
俺の勘が正しければ
これは俺が解決しなきゃいけない問題なんやから。
流星side
グループでのレギュラー番組撮影日。
仕事に行こうと起き上がったのに、お腹が痛くて…トイレから出られない。
あの動画が上がってからと言うものの
腹痛が続いて、食べ物もあまり食べられない。
食べてもすぐ戻してしまう。
なんとか1人の仕事にはいけたけれど、
今日は全員での撮影。
そう思うと…体が動かない。
なんで…?
まだあの言葉を気にしてるん?
身長が大きくなった事くらいで…
それが世間に知れ渡ったくらいで。
僕、弱すぎるやろっ。
そんなことで…っ。
でも、体は正直で
言うことを聞いてくれなかった。
時間が迫る中、迷惑はかけられないと思い
マネージャーさんに連絡をすることにした。
今日は3〜4本の収録をするはずだったのに。
でも、いけそうにない。
…
こんな状態なら、しばらく…休んだ方がいい。
いちいち連絡するなんて…迷惑や。
一層休んでしまいたい。
…いつもなら思いもしないことを
思ってしまう。
それほど、言葉の呪いは強かったのだった。
大ちゃんに嫌われるくらいなら
合わない方がいい。
会いたくない。
…プルプル
そう思って、思い切ってマネージャーさんに
数日のお休みをお願いしたのだった。
意識も朦朧として…やっとトイレから出たと思ったら
ベットに行く途中で…記憶がなくなっていた。
…
あれ?
すると突然
…えっ、大ちゃんが小さくてなって…。
グンッ…
いや、違う。僕が大きくなっていってる…
ドアよりも部屋よりも大きくなって…
天井に頭が付いて…。
ぐぐぐぐぐっ…!!!
いややっ!!
どこまで大きくなっちゃうの!?
バキバキッ…
ついには天井を突き破って…
止まってっ!!!
大きくなんて、なりたくないっ!!!
…
目の前には大ちゃん。
…
えっ、夢?
現実…?
で確か、僕…天井を突き破って
家を壊して…
でも
わしゃわしゃ…と頭を撫でてくる大ちゃん。
…なんでここに?
…
鍵…開けっぱなし。
やっちゃった。
…
だって、お腹が痛いんだもん。
この呪い、大ちゃんに言ったら治るのかな。
でも言いたくない。
もしおの言葉が本当だったら?
本当じゃなくても、こんな事で体調不良になったって知られたら、幻滅されそう。
どうしたらいい?
…
その通り。
大ちゃんにはお見通しだった。
…っ!!!
笑わないでっ。
そんな簡単な話じゃないのっ!!!!
すっ…
“早く嫌いって言って!!”
そう言おうとしたのに…
大ちゃんの手で口を覆われる。
それ以上…話さないように。
…
…
…でも
怖かった。
…ぎゅっ
ぎゅーーっ。
その言葉を聞いて
僕の心がスッと…軽くなっていった。
数年前の呪いが解けた瞬間…だったのかな。
そう。昔のことだけど…
大ちゃんの事で体調崩すのは今も変わってない。
だって、それほど…大好きな存在なんだもん。
今も変わらずにね。
数日後。
しっかりお休みをもらって、心も休ませて。
僕は仕事に復帰できることになった。
時々、大ちゃんも様子を見にきてくれて
ご飯を僕に作ってくれた。
ちゃんと食べなさい!って。
本当にパツパツになりそうだから少し遠慮したけどね。
そして…撮影の時間に。
もう大ちゃんが隣でも大丈夫なんだ。
どんな僕でも好きだよって言ってくれたから。
…
でも…
…
大ちゃんはこの数日で衣装さんに
厚めの靴をお願いしてたみたい。
そんな事しなくていいのに。
それにしても…盛りじゃない?
はぁ、仕方がないなぁ。
そう思って大ちゃんの耳元でこう呟いた。
って。
僕に言ってくれたようにね。
身長を本当に抜かしてるかは分からないのですが…
もしかしたら大きくなったのかな?と思い
書いてみました。
どんな大西畑でも可愛いけどね!













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。