( ガタッッ
突然、物音が耳に飛び込んでくる。
少し瞼を上げると、天井が目に入った。
どうやら、あのままお兄さんのベッドで寝落ちていたようだ。
完全に意識が覚醒しきった頃、
ふとお兄さんの姿が無いことを疑問に思った。
そっとベッドから降りる。
部屋は、間接照明に照らされていて薄暗い。
付いたままになっているモニター画面。
まるで浮かび上がるかのようなデスク周りに、
少し近づこうとしたその時。
床付近から聞こえてきた小さな唸り声に、
思わず飛び退く。
恐る恐るデスクの足元を確認すると、
其処には蹲ったお兄さん。
目の前で、疲れ切ったように瞑られる紅の瞳。
どうやら、さっきの物音は
お兄さんが椅子から落ちる音だったらしい。
俺が声を発すると、
お兄さんは応えるかのように片眉をくいっと上げた。
” 大変 ” という言葉の、否定はされなかった。
お兄さんは身体を起こし、椅子へ座り直す。
キーボードを打つ音が響く。
付いたままだったモニター画面。
崩れ落ちていたお兄さんの身体。
何時からなのか分からない仕事。
デスクの上の時計は、27時を指していた。
立ち上がったお兄さんに着いていく。
2人で踏み入れたキッチンは、やっぱり暗かった。
お兄さんがパチッっと電気を付け、
その眩しさにお互い目を細める。
鍋を取り出し、水を入れるお兄さんを横で眺める。
…暗い空間なんて、本当は全然
怖くない。
けど、ああでも言わないときっと、
…まぁ、別にお腹減ったのも嘘じゃないし。
そう思いながら、お兄さんの手捌きを観察する。
そんなことを言ってる間に、
茹でて、めんつゆを絡めただけのパスタは出来上がった。
少し黒くなったそれを前に、
俺は手を合わせる。
お兄さんは、俺が食べ終わるまで俺の前に座っていた。
その目はやっぱり疲れていて、暗かった。
でも、俺の話にしっかり反応してくれた。
生意気を言っても許してくれた。
結局、俺がもう一度寝たのは朝方で。
お兄さんは変わらずに画面を睨んでいた。
お兄さんの具が無い焦げたパスタは、
昼に食べたカップラーメンの何倍も美味しかった。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。