亥鈴side
しばらく経って、頭が正常に働き始めた頃、俺はここが病院であることに気づいた
コンコンッ
ガラッ
どうして、皆んなは俺に優しいの?
どうして、そんな接し方なの?
やめて
お願いだからやめて
嫌だ
うるさい
黙れ
来ないで
話さないで
触れないで
優しくしないで
お願いだから
勘違いしてしまうから
ああ、切りたい
切りたい切りたい切りたい切りたい切りたい切りたい切りたい切りたい切りたい切りたい切りたい
確か、カバンの中に…
ガサッ
あった.…
シュッシャッ
薬もいいけど、やっぱり切る方が実感がある
楽しい
気持ちがいい
引っかかってた何かがスッとなくなったような…そんな気分になれる
この時間が人生で唯一の楽しく、私の生きていられる意味な気がする
そうして私はしばらく…何分だろう…何時間かもしれない
腕を切り続けた
もう、もし見られたらなんて…考えなくていいのかな……
きっとあの三人には見られてるし
医者だって…看護師だって…どうせ見てる
なら、遠慮はいらないよな
俺は思う存分切り続けた
気づいたら俺は眠っていた
いや、気絶していた
恐らく、貧血で
今まで眩暈はあったけど、気絶なんて…初めてだなぁ
なんて呑気に思っていた
起きると、腕には包帯が巻かれていた
多分、看護師さんがやってくれたんだろうな……
カッターは倒れた拍子に投げてしまっていたのか、カーテンの後ろにいっていたから気づいていなかったんだろう
もはや、このカッターは俺の一部のようなものだ
これが無ければ生きていけない
コンコンッ
そのノックの音に俺は反射的にベットを急いでおり、扉の鍵を閉めた
しまった
違う
何が?
違う
合ってる
違う
会いたくない
違う
せっかく優しくしてくれてるのに
コツコツと扉から足音が遠のいていく
もう…わかんねぇや……
俺…何したいんだろ……
人の優しさに縋りたい反面、迷惑かけたくないから関わりたくないと思ってる
矛盾がすぎる……
ああ、やめよう…













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!