私と勝己は、お互いにそれぞれの仕事をしながら、毎日を過ごしていた。
高校を卒業してから、もう8年。
振り返ってみれば、本当にあっという間だった。
高校を卒業した私は、海上保安庁へ進み、長期の海外任務にも出た。
2年間、日本を離れていた時期もあった。
その間、勝己とは離れていたけれど、それでもお互いに自分の夢を諦めることはなかった。
そして日本へ帰ってきてからは、再び勝己と一緒に過ごすようになった。
最初は、離れていた時間を埋めるように、たくさん話をした。
くだらないことで笑ったり、
仕事の愚痴を言い合ったり、
休みの日には一緒に出掛けたり。
時には仕事で忙しく、何日もまともに顔を合わせられないこともあった。
それでも、帰る場所にはいつもお互いがいた。
勝己はヒーローとして、さらに多くの人を救うようになっていた。
そして数年前。
勝己はプロヒーローとしての経験を積み重ねた末、自ら独立した。
自分の信念を貫くために、自身のヒーロー事務所を立ち上げたのだ。
現場に出るだけではなく、事務所を背負う立場になったことで、勝己の仕事は以前よりずっと多くなった。
それでも、勝己は変わらなかった。
「俺がやると決めたんだ。最後までやる」
そう言って、どんな仕事にも真正面から向き合っていた。
一方、私も海上保安庁の隊員として経験を積み、様々な現場へ向かうようになった。
海難救助。
遭難者の捜索。
災害対応。
そして、時にはヴィラン絡みの事件。
そして今では、海上保安庁の一部隊を任される隊長になっていた。
自分一人で動けばよかった頃とは違う。
部隊の隊員たちの安全。
作戦の判断。
現場での指揮。
一つの判断が、隊員たちの命や救助される人たちの未来に関わる。
責任は、以前とは比べものにならないほど大きくなった。
それでも私は、この仕事を選んだことを後悔していない。
あの頃、海の上で誰かを助けるために必死だった自分が、今では後輩たちを守り、導く立場になっている。
……なんだか、不思議な気分だった。
今では、自分が誰かを守る側になっている。
私たちは、それぞれ違う場所で戦っている。
けれど、帰る場所は同じだった。
楽しいことばかりじゃなかった。
怖い思いをしたこともあったし、
帰ってきてから何も話したくない日だってあった。
そんな時、勝己は余計なことを聞かず、ただ隣にいてくれた。
逆に勝己が疲れ切って帰ってきた時は、私が何も言わずに隣に座った。
昔なら、もっと不器用だったと思う。
でも、長い時間を一緒に過ごすうちに、言葉にしなくても分かることが少しずつ増えていった。
高校時代。
あんなに遠く感じていた未来が、今では日常になっている。
雄英で出会った仲間たちとも、今でも時々集まる。
それぞれがヒーローとして活躍していたり、別の道へ進んでいたり。
昔と変わらない笑顔を見るたびに、あの頃のことを思い出す。
体育祭。
林間合宿。
文化祭。
訓練。
任務。
卒業。
そして、2年間の海外任務。
離れていた時間も。
再会した日のことも。
全部、昨日のことのように思い出せる。
……なのに。
気づけば、高校を卒業してから8年が経っていた。
そして――
私たちには、もう一つ叶えたい夢があった。
それは、緑谷くんのためにアーマーを完成させること。
あの日、オールマイトから聞いた僅かな可能性。
そこから私たちは、少しずつ動き始めた。
資金を集め、必要な技術を探し、何度も試行錯誤を重ねた。
勝己が独立してからも。
私が隊長として忙しくなってからも。
この計画だけは、決して諦めなかった。
そして――
ついに。
そのアーマーが完成した。
長い時間をかけて、私たちがずっと追い続けてきた夢が、ようやく形になった。
そして今日は。
オールマイトが、そのアーマーを緑谷くんへ渡す日。
朝。
私は海上保安庁の制服を身にまとい、鏡の前で身だしなみを整えた。
ふと隣を見ると、勝己もヒーロースーツへ着替え終わっていた。
昔とは違う。
お互いに、それぞれの場所で責任を背負う立場になった。
それでも、こうして並んでいると、雄英にいた頃と何も変わらない気がした。
勝己が玄関へ向かいながら、こちらを見る。
私たちは並んで歩き出す。
向かう先は、約束の場所。
8年前に交わした約束を果たすために。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。