ガチャ
扉を開けたのは、愁斗だった
俺は驚いて声が出なかった
俺を除いたみんなは愁斗の元に駆け寄った
みんな、愁斗にずっと言いたかった「おかえり」を伝えていた
けど、俺は何も言えなかった
そんな時、愁斗に名前を呼ばれた
俺はやっと愁斗と目を合わせる
俺はその場で「おかえり」を言った
何故か、どうしても足が動かなかった
そんな時
愁斗は両腕を広げた
『おいで』
愁斗に言われたはずなのに、何故か拓也に言われたみたいで
拓也の姿が見え、声が聞こえた気がした
お互いの家に泊まった時いつも俺からハグを求める
けど凄くたまに、拓也から求められることがあった
その時必ず言うこと
優しい笑顔でそんなこと言うから、俺は思いっきり抱きしめに行く
それが俺たちだった
もう出来ないと思ってたのに、今の愁斗はあの時の拓也だった
俺の足は自然と愁斗の方に歩き出した
歩いてると同時に俺の目からは涙が溢れ出した
あの時____拓也が死んだ時以来の涙
愁斗の所に着く前に俺はうずくまってしまった
下を向いたまま、俺は前を向けなかった
ギュッ
そんな時、誰かに抱きしめられた
誰かはすぐに分かった
愁斗だ
けどその体温が、抱きしめ方が、拓也そのものだった
愁斗の心臓の音が聞こえる
この心臓は、拓也の心臓
一緒に寝てる時に聞いていた音
拓也が生きているって実感できた音
大好きだった、愛していた拓也の音
俺は情けないくらい愁斗に抱きしめられながら泣いた
泣きまくった













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。