『もっと勉強しなさい』
『100点以外認めないわよ』
そう言われて生きてきた。
親からの愛情はまともに受け取ってきていない、二人とも私の学歴だけを見ている。
誰も"私"を見てくれない____
まだ明るい夕焼けの道を歩く
いつも通っている道、変わらない風景。
その平凡さがこの地獄がまだ終わらないと語っているようですこし苦しくなった
急に知らない男に声を掛けられた
その男は怪しい仮面にトレンチコートという、いかにも不審者の見た目をしていた。
誘拐でもされるのかな____
ひらひらと胸の前で手を振って怪しくないとアピールしている姿が更に怪しくさせる
そんなの嬉しくなんかない、言われ慣れた訳でもないが今は喜べる余裕など持ち合わせていなかった
魂抜けた顔って、失礼過ぎでしょこの人。
…そんな変な顔してたのかな。
怒った顔も悪くねェけどよ、と軽く笑っている。
大袈裟に腕を広げてから
最高の舞台…
と言う言葉に少し惹かれる。
わざとらしく胸を押さえている
自分でおじさんと自称していざ言われるとくらっている、頭がおかしいんじゃないかこの人は。
___なんだその変な名前は、偽名?なんでだろう
まあシークレットサービスってやつか
この時点で、無意識に興味が湧いてしまっていることを自分でも気が付かなかった
何かを思い出したような顔をしてから
そう言い私の頭に手を伸ばすコンプレスさん、柄にもなく素直に目を瞑った
大きい優しい手に頭を撫でられる、不思議と安心している自分に困惑する。
、てか本当にゴミを取っているのか。
頭を撫でられているようにしか感じられない。
目を開けると
ポンッ!!!!
と紙吹雪が広がった。驚いているとコンプレスさんが一輪のバラを持っている
画面の下で顔も知らないのに笑っている気がする。
ゆっくりと孤を描いて落ちてくる紙吹雪と一輪のバラに目を奪われる。
マジックを見せてもらっただけのはずなのに、どん底の私を救ってくれたような。
不思議な感覚がつま先からつむじまでふわりと走る。
何を思ったのか私の顔を見てから
少し黙ってコンプレスさんは目を逸らした。
まだ状況が掴めていないが、バラを受け取りながら。
今までの自分とは違うような顔をしていると思う。
バラがこんなに輝いて見えるのは初めてだ。
いつもなら知らない人に名前で呼ばれたら
「馴れ馴れしく呼ばないで」とでも言うのだろうか。
今は何故か嫌じゃない。___むしろ落ち着くような感じがした。
その瞬間白い煙が広がり気付いた頃にはコンプレスさんは居なくなっていた。
残ったのは消え掛かっている白い煙と一輪のバラだった。
バラを大事に持ちながらとっくに遅れた塾へ向かう。
後悔はしてない、むしろ楽しかった___。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。