さっき聞こえてきた話を思い出しながら、思わず苦笑する。
声の感じからしておおよそ八幡さんとみぞれさん、そして後ろの席はつい先日めめ村に戻ってきたレイラーチャンネルだろう。
話ぶりからこっちのこともバレてそうだし、これからのことを考えると少し憂鬱だが、あの3人だったらそこまで面倒はないとどこか安堵もある。
そう、これから始まるのは入学式。
祝ってもらう側がこんなこと言ってはいけないと思うが、在校生からしても話を聞くだけな暇な時間だし、新入生からしても緊張するだけだし全く誰の得にもならないと言ってもいいほどつまらない行事だ。
そこで俺は新入生代表挨拶を任されてしまった。
同じ高校に進学した者同士、少しくらい手伝ってくれてもいいと思うのだが、あの2人は春休み中ゲームをしてばかりで全くと言っていいほど手伝ってくれなかった。
おかげで文章は全て自力で考える必要があった。
それを今からメンバー含む全校生徒に聞かれると思うと憂鬱で仕方がないが、すでに決まったことは仕方ないと腹を括る。
何度もイメージし、練習してきた流れでステージの上へ向かう。
すでに先輩のやっていたスピーチのおかげで流れは確認できている。
ステージ上に上がり、準備してきた台本を取り出す。
準備も整ったので、前を向くと最前列に座っていた同学年の少女と目が合う。
すると少女は口パクで何かを伝えようとする。
初対面のはずの彼女が何を伝えようとしているのかはわからなかったが、おおよそ関係のないことだろう。
そのまま気づかなかったことにしようと無視を決め込むと、蒼の姿が視界の端に入る。
そのまま目線だけ蒼の方へ向けると、今にも笑い出しそうな表情をしている男子がいた。
スピーチの内容は大真面目に考えた。
ミスだって何回も蒼と陽葵に確認してもらったからないはずだし、今のところ順調に進んでいるため途中で文字を飛ばしたり、噛んだりということもなかった。
だからこそなぜ彼が笑っているのかがわからなかった。
だけどここでスピーチが止まったり、不審感が表情に出てしまうほどやわでもない。
4年間、アモアスで騙し、騙されてきた経験がこんなところで役に立つとは思わなかったが、無事1度も失敗することなくスピーチを終わらせることができた。
寮生活だし、後で話しかけられることがあるかもしれない。
終わりに近づいていく入学式の司会の言葉を聞きながら、さっきの2人の容姿を覚えておこうと脳に刻んだ。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。