目覚めれば午後11時。
本当にそろそろ起きなくてはならない。
もうないこは家に居ない時間帯だし、一旦帰って荷物だけ用意して仕事に行くか...
ゆっくりとベッドから立ち上がりリビングに出ると、鍵と一緒にメモが残されていた。
横を見ると手作りらしきサンドイッチが置いてあった。
中身を見ればハムチーズと野菜、玉子と随分バラエティに富んでいる。少し形がいびつだったが。
上着を手に取りサンドイッチはラップで巻いてから部屋の鍵を片手に玄関へと向かう。
勿論サンドイッチの中のアボカドは捨てた。
また名前を忘れたが、その優香だか優美だったか...メンヘラホス狂女よりはマシな客ばかりだった。
じゃあね、とその客は嬉しそうな笑みを浮かべながらタクシーに乗って行った。
ひとしきり見送るとまた笑顔を貼り付けて店内に戻る。
今日はこれで終わりなのでさっさと帰ろう。
かといっていむの家に入り浸るのもな...
どうせ帰ったら「なんで居なかったの」なんて煩い声で泣かれるだけだし。
そんなことを思いながら着替えを済ませて同僚達に挨拶をしてから建物を出た。
時だった。
え、と間の抜けた感嘆符をつける前に彼は思い切り俺の胸に飛び込んできた。
あろう事かスリスリと体を寄せ付けてまで。
前までテストとか終わらせないといけない課題とか色々予定が立て込んでいると連絡されたきりだった。
目の前で笑顔の花を咲かせるりうら。
満面の笑みは俺には似合わない。
自分がそうするのも、そんな人が近くにいることも。
そういうと周りにお花でも舞っていそうなほど顔を明るくするりうら。
心做しか頬が赤い。
そういうこと、と認識しているのだろう。
照れたように頬を赤くして俺の腕を引っ張る。
そのりうらの腰をそっと俺の方に寄せて。
火照る顔にそっと手を寄せて撫でてあげると、また嬉しそうにふにゃりと笑った。
何故だか初兎によく似た笑い方だった。
そんな雑念が浮かんだことに驚きつつも顔には表さないように。隠すようにりうらの唇を奪った。
大人しく俺の腕に頭を乗せると寝息を立て始めた。
暫く背中をトントンとしてから本格的に寝たのを見計らってシャワーを借りることにした。
美少年はシャンプーにもこだわりがあるらしい。
蜂蜜配合の高そうなやつだった。
遠慮がちに出すとくどくない匂いが鼻をかすめた。
シャワーを捻って泡を綺麗に流してから目に入ったのはずぶ濡れになったまま三白眼でこちらを見る俺。
前髪のせいか目元には影が残っていた。
終わってるねこの夢主くん
クズ丸出しにして書いたつもり
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。