背後からヨンジュンの声が返ってくる。
振り返ると、五人がそれぞれ外へ出る準備をしていた。
昨日までゲーム画面の中にいたとは思えないほど、普通に靴を履いている。
ただし、普通ではないところが一つある。
全員、異様に目立つことだ。
あなたが五人を順番に見た。
ヨンジュンは黒いジャケットを羽織り、髪を軽く整えている。
スビンはシンプルな服装なのに、身長のせいでどう見てもモデルにしか見えない。
ボムギュはラフな服装で、鏡を見ながら前髪をいじっている。
テヒョンは服装まで無駄がなく、妙に落ち着いている。
そしてカイは、何も考えていないような顔でニコニコしていた。
ボムギュはニヤニヤしながら靴紐を結んだ。
そんなやり取りをしながら、あなたは玄関のドアを開けた。
外の空気が入ってくる。
その瞬間、あなたは妙な感覚に襲われた。
昨日までなら、この扉の向こうにはいつもの日常があった。
学校へ行って、バイトへ行って、帰ってきて、ゲームを開く。
それだけだった。
なのに今は、その日常の中に五人が混ざっている。
スビンが笑う。
その柔らかな笑顔を見て、あなたも少しだけ笑った。
しかし玄関を出てから三分。
早くも問題が起きた。
ヒュニンカイが立ち止まった。
ヒュニンカイが指差した先には、自動販売機があった。
あなたは財布から小銭を取り出して見せる。
ヒュニンカイは興味津々で自動販売機を眺めた。
なんとなく、その言葉が胸に引っかかった。
彼らの世界には、自分たちが当たり前だと思っているものがたくさん存在していた。
でも、それを実際に使うことはなかった。
画面の中にあるだけ。
その事実を思うと、少し不思議な気持ちになる。
そのときヨンジュンが突然、あなたの手から財布を取った。
ヨンジュンが財布を持ったまま、少しだけ笑う。
その言葉は、思ったより真っ直ぐだった。
ゲームの中なら、こういうときは決まった甘い台詞が出てきたかもしれない。
でも今のヨンジュンは、何も決められていない。
自分で考えて、そう言っている。
あなたが財布を受け取りながら言う。
ヨンジュンが笑った。
その横でボムギュが突然、あなたの肩に腕を乗せる。
二人で笑っていると、ヨンジュンがじっとボムギュを見る。
あなたは二人を見て、ため息をついた。
その瞬間。
また、視界の端にウィンドウが浮かんだ。
《BEOMGYU 好感度:76》
《YEONJUN 好感度:74》
一瞬だけ数字が変わっている。
あなたが目を瞬く。
すると、今度は別の文字が表示された。
《好感度変動を確認》
《感情データに異常値を検出》
《――注意》
表示は、そこで消えた。
ヨンジュンが顔を覗き込む。
あなたはスマホを握りしめた。
まだ、この世界で何が起きているのか分からない。
ただ一つ分かるのは
五人の好感度は、ゲームの中にあった数字とは違う速度で動き始めているということ。
そして、その数字が動くたびに五人の態度も、ほんの少しずつ変わっている気がした。
あなたが歩き出す。
ヒュニンカイが駆けてくる。
その後ろからスビンが笑いながらついてくる。
さらにその後ろでは、ヨンジュンとボムギュが何か言い合っている。
六人の声が朝の街に混ざっていく。
そして、あなたはまだ知らない。
この日の初出勤が。
五人の現実適応能力を測るどころか彼らの顔面によって、街中をちょっとした騒ぎに変えてしまうことを。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。