【I.N side】
『Stray Kids おめでとうございます!!!』
パシャーン!と勢いのある紙吹雪の音と、ドッと集まるたくさんの歓声
相変わらずこの音には慣れないなあと、肩をすくませては次第に1位への喜びがじわじわと胸に広がる
最近はなんというか、特にそんな喜びが余計に感じられ、今この瞬間をしっかりと噛み締めている
すぐさまアンコールのステージに移り、舞台にいる他のアイドルの方々と挨拶をかわしていると、周りより抜きん出て背の高いあの子....えっと、スホさんが目をキラキラさせて挨拶をしてくれた
収録前に楽屋挨拶に来たスホさんのグループは、今や各所メディアで凄く大バズリで、僕たちとパフォーマンスや歌の系統も似ていることもあり勝手に親近感が沸いていた
そんな彼らのグループの中の一人、第一印象はとにかくデカい、だったけど、そんなのも忘れてしまうほどコロっとした人懐っこい笑顔と新人ならではの初々しさがあるスホさんは、どうやら僕のファンらしい
彼もまたメインボーカルを務めていて、トロットを得意としている
「アイエン先輩の唯一無二な歌声と、ステージでのパフォーマンス力が本当に大好きです!!!僕の永遠のロールモデルです!!!」
そんなことを言ってくれて嬉しくないわけがないし、こうして後輩に少しでも影響を与えていることが、ここ最近の僕の嬉しい出来事だった
そう、ここ最近、ね。
僕は最近まで心の底から何かを楽しむということができなかった
STAYにはバレまいと頑張っていたけど、どうやらそういうのはバレバレで、実際心配する声が上がっていたし、STAYと対面した時に直接言われたりもした
「僕は大丈夫だから、」
それしか言いようがなかった
てか、それ以外なんてない
大丈夫と言い聞かせないと僕がやっていけないんだ
あれから僕の身に何か降りかかったこともないし、渇きを覚えることはなかった
最初の方なんて正直生きた気持ちがしなかったけど、やっと僕の気持ちが落ち着いてきた
やっと、心の底から何かを楽しい、と思える日が来たと
そんな風に思えたことが嬉しくて
今こうしてSTAYの前に立って、たくさんの愛を感じれているこの瞬間がたまらなく嬉しい
そんな嬉しさを噛み締めながら楽屋に戻り、なんとなく渇いた喉を潤そうとしたらチャンビニヒョンが勝手に僕の飲み物を飲んでたから、そんなヒョンとついでに、という形でついてきたリクスヒョンと一緒に自販機へ向かった
そしたらちょうどスホさんがいて、またも「尊敬してます!」なんて言われるもんだから、自然と口角が上がってしまう
他愛もない会話をしていれば彼の口からぽろっと溢れた「あなたヌナ」に、恋しさを思い出すよりも先に僕の身体にピシッと何かが走った
忘れることもない、僕の大事な人の名前
名前を聞いたからなのか、なんとなく身体の奥から何かを求める渇望というものが疼き出している気がして
それが「渇き」だなんて、思いたくもなかった
いや、思い出したくもなかった
だって思い出してしまえば僕は..................
次第に荒くなる呼吸に、何も考えられなくなる
なんなんだよ急に.........
握りしめていた拳に、ぐっしょりと汗がこもっていた
一旦呼吸を落ち着かせて、チャンビニヒョンが買ってくれた水を一気に飲み干す
.............おかしい、飲み干したってのに
なんで喉が潤わないんだ
これじゃまるで、あの頃と全く同じ
「渇き」
じゃないか...................
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。