第12話

追伸 II
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2024/05/31 04:37
なぜか来てしまった同窓会。


ぼーっと思い出すのは目の前で忙しそうに人と話す、


彼女とのかけがえのない思い出たちばかり。


心の奥底にしまったアルバムを


私は久しぶりに取り出し、笑みをこぼす。



「春はいっしょにお花見に行ったよね。
(なまえ)
あなた
あっ! 高見、花びら付いてるよ?
Ayane
Ayane
えっ、どこ?
(なまえ)
あなた
おいで、取ってあげる
優しく私の頭から花弁を払う彼女の瞳に見惚れて、


結局どんな桜だったかなんて覚えてない。」


「夏は2人きりで夏祭りに行った。
Ayane
Ayane
人が多いね
(なまえ)
あなた
ねぇ〜祭りって感じがして嫌いじゃないけど!
Ayane
Ayane
迷子になっちゃいそう
(なまえ)
あなた
ふふっ、
なぜかイタズラ気に笑った彼女は、


何の前触れもなく私の手を掴む。
(なまえ)
あなた
こうしたらはぐれる心配もないね
Ayane
Ayane
もう、バカッ//
って顔を赤く染める私の手をずっと


花火が終わるまで、家にたどり着くまで、


たとえ人が一人も歩いていない夜の路地でも


離さないでいてくれたよね。」



「秋は確か、すごくしょうもないことで喧嘩した。
Ayane
Ayane
なんで昨日、電話出てくれなかったの?
(なまえ)
あなた
昨日は夜まで部活があったから、、

家についてからは疲れて寝ちゃったし
Ayane
Ayane
昨日は部活休みの日じゃん!
(なまえ)
あなた
大会前は休みが不定期になるって言ったじゃん
Ayane
Ayane
そんなの聞いてないし、、
(なまえ)
あなた
高見が聞いてなかっただけでしょ
Ayane
Ayane
もういい!知らない!
仲の良い2人で有名だった私達は


喧嘩することなんて滅多になくて、


そのせいで色んな人に迷惑かけて、


結局、挙句の果てに
(なまえ)
あなた
高見っ!
Ayane
Ayane
なに、、
(なまえ)
あなた
ごめん、、ほんとごめん

私がちゃんと連絡すればよかったのに

高見にひどいこと言って、、

私、高見がいないとなんも楽しくない

だからほんとごめん、許して、、、、
一ヶ月の冷戦は


彼女の泣きじゃくりながらの謝罪で幕を閉じた。
Ayane
Ayane
ごめん、私も嫌な言い方して、、
縋り付いて泣くその様はまるで子供みたいで、


でもきっと私なんかよりも遥かに大人な彼女は


引くに引けない不本意な喧嘩に終止符を打ってくれた。」
「冬はあなたにマフラーを編んだ。
(なまえ)
あなた
うわぁ!すごい!手編み?!
Ayane
Ayane
言っとくけど、、マフラーだから...
(なまえ)
あなた
えっ、うん、わかってるよ?
Ayane
Ayane
マフラーだからねっ!
(なまえ)
あなた
うん、どう見ても、、
Ayane
Ayane
誰がなんと言おうとマフラーだから!

こことか、こことかもちょっとアレだけど、、

って何笑ってんの!
(なまえ)
あなた
いやぁ~なんか愛を感じるなーって
Ayane
Ayane
馬鹿にしてるでしょ?
(なまえ)
あなた
なわけ無いじゃん

私のために頑張ってくれたんだから
Ayane
Ayane
うるっさい!もう行くよ!
(なまえ)
あなた
高見っ!
Ayane
Ayane
んっ?
(なまえ)
あなた
ありがとう!すっごい嬉しい!!
Ayane
Ayane
っ//大事にしてね、、
こんな可愛くない返しでも、


彼女は優しく微笑んで、


「大事にするね」って言ってくれた。


夏に切り替わるギリギリまでそれを付けてくれて。


毎朝、その不格好なマフラーに


嬉しそうに顔を埋めていた彼女を見て、


私はどうしようもなく胸がドキドキ高鳴った。」




いくつもの季節をいつものように過ごした私達。


やわらかくて優しくて


無期限、無条件の幸せだと思っていた。


このときが終わるはずがないって思っていたから。


だけどそれが長く続かなかったのは、


お互い「好き」の一言だけが


どうしても言えなかったからに違いなかった。

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