第96話

あと少しだから
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2024/01/04 08:13
ハツ
…………落ち着いた?
ナナ
……………申し訳ねえ
ハツ
もーいいって。
親子喧嘩なんてあるあるだぜ?
ナナ
………そうだね
狭い個室でナナを見る。

彼を落ち着けるために近くにあるカラオケまで歩いてきた。

しばらく歩いて頭を整理させ、事情を聞き出せば
将来について親子喧嘩をしたと一言。
ハツ
…………差し支えなければ、どんな内容?
ナナが落ち込むなんて珍しいな
ナナは顔を上げてこちらを見つめ、小さな逡巡の色を見せた。

しかしさほど待つ事なく彼は言った。
ナナ
…………このままじゃ革命長になれないって
ハツ
…………
ハツ
……………………
ハツ
…………マジで?
ナナ
マジで
ハツ
…………それは大問題だ
ナナ
………
驚き、ようやく絞り出した言葉がそれだった。

いや、それ以上にナナがどれほどショックだったかと。


元々誰もが革命長になれるわけではない。

革命児でもそれは限られる。

しかしそんな中、周りの期待以上に応えるナナへは

全員口を揃えてこう言う。

______次期革命長は彼以外ありえない。

俺だって、ナナだってそれを疑ったことはない。

そうであると信じて今まで______
ナナ
…………思いやりだって
ハツ
はっ?
ナナ
………戦い方に味方への配慮が見受けられないって
ハツ
………………っ!
思わず、眉が歪んでしまった。
ナナ
…………思い当たった?
ハツ
…………いや
主人には正直であれ。


ずっとそう教えられてきた。

俺は知っている。

雨音との戦いの時だって、お互いに配慮なんてなかった。

躊躇いなく攻撃できるからこその連携だった。

そこには当然リスクだってあった。

それを回避できなかった事だってあった。
ハツ
…………、ナナ
ナナ
…………
________俺はいらないんじゃないか

かつての俺の言葉。

全部一人でして、俺なんていないも同然の動きで立ち回って、
利用できる俺の動作だけ使って、俺達を動かして。

それがお前の戦い方。
ハツ
…………俺はナナにとって役立たずなんじゃないか
ナナ
っ……な…
ハツ
ナナは全部自分で出来る。俺の手なんかいらずに。
それは戦闘でも同じで、俺はお前の駒だった
ハツ
ナナは盤面全体を見て正確な行動をする。
時に味方が傷ついてもお構いなしで動き続ける
ナナ
っ…………、……そう、だね
ハツ
それでも
ナナが顔を上げる。

希望と絶望が隣り合わせに座っているようだった。


それでも俺は知っている。

その連携の中で、ナナはいつだって俺達を守るために
立ち回っていたこと。

自分の力に驕らず怠けず、みんなに平等に接していること。


_________俺はハツがいないと生きていけないから


俺はひと足先に救われているんだ。
ハツ
ナナは俺を必要としてくれた
ハツ
…………それがどんなに嬉しかったか。
今能力で“共有”してくれて構わないくらいに
ナナ
っ……それは、何か特別ってわけじゃ…
ハツ
………不安定なんだよ。
俺も、みんなも、ナナも
ハツ
だから誰かに支えてもらってるんだ。
そうやって正解を模索していく
ハツ
…………ナナの戦い方には確かに何かが足りないのかも
しれないけど、それで得られるものも確かにあった
ハツ
……正解には近いんだ。すごいことなんだぜ
俺がそう笑うと、少しナナの表情が柔らかくなった。

全て本音だ。全てナナから学んだことだ。
ナナ
…………でもやっぱり、俺は
ハツ
一緒に
思わず遮るように声を張り上げる。

それは一人だけのものじゃない。
ハツ
…………一緒に、正解を探そう
ナナ
っ…………!
ハツ
…………ナナはきっと革命長になれる
ナナ
…………
ナナ
……………………ありがと
彼はおもむろにはにかんだ。
ハツ
はーいドリンクバー二丁
ナナ
あ、ありがとう
部屋に戻ると残酷なアレのイントロが流れていた。

ちゃんと歌ってんじゃねえよ。

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