第95話

本気だよ
28
2023/12/27 08:01
ライナ
…………俺っている意味あるのかな?
ルイ
は?
ライナ
いや、やっぱ嘘、何でもない
ルイ
ちょ待てこら
立ち上がるライナを僕は押さえる。

そしてそのまま向き合い、話を催促する。

ライナは意外そうな面倒くさそうな顔をして僕を見る。

やがて神妙な面持ちになり、俯いたまま話しだした。
ライナ
…………一人になる度思うんだ
ライナ
俺は何の役に立ってるんだろうって。
咄嗟に反応できない、みんなと一緒に戦えない、
みんなみたいな力もない
ライナ
…………“革命児”なんて名ばかりの非戦闘員
ルイ
…………
静寂が部屋を包み込む。

彼の指先が震えているのは秋雨の冷気のせいだろうか。

それを見つめながら僕は全身に血が巡るのを感じた。
ルイ
…………お言葉ですが
ルイ
ライナのこと本気で非戦闘員だなんて
思ってる奴いないよ
ライナ
…………?
ライナが顔を上げた。
ルイ
僕らは基本上から命じられて動くんだ。
最近奇襲が多かっただけで、咄嗟に〜なんて
本来必要じゃない
ルイ
それに適材適所だってずっと言ってるじゃん。
ライナは僕らには出来ないことができる。
ルイ
狙撃の腕がある。情報を得る耳がある。
潜入できる足がある。みんなのために動ける心がある
ルイ
これで、何が役立たずだよ
ライナ
…………、でも、それは他の部隊のひとだって
ルイ
それに
僕は彼の頬をぐっと掴み目線を寄せる。

戸惑いの色を無視して僕は紡ぐ。
ルイ
…………僕の呪いを解いたのは
…………………ライナだけだ
ライナ
…………!
今でも脳裏に鮮明に蘇る。

7年前の僕に寄り添ってくれたこと。

5歳の頃から苦しめられてきた呪いの、
その解呪の始まり。

初めて心から好きだと思ったこと。
ライナ
…………、ルイ
ルイ
……だからそんなに怖くならなくても大丈夫



ルイ
僕が毎日、愛してるって言ってやる
ライナ
……………!


少年は目を見開いた。


やがてゆっくりと微笑んだ。

ライナ
それはちょっと…
ルイ
僕も言ってて思った
笑った。

7年前と同じように。

君が言ってくれたことを
ぼくはそのまま返しただけ。
ライナ
あー笑った。よく覚えてんなそんなのw
ルイ
割と印象的だよw
ライナ
あー…なんだ
ライナ
…………小せぇ
笑みを溢しながら彼は窓の外を見た。

遠い遠い視線を泳がせて彼は何かを考えていた。
ルイ
…………本当に言おうか?
ライナ
あほかwやめとけそんなん…
ルイ
本気だよ
ライナ
…………、
まじまじと僕を見つめる。

呆気に取られたように口を開けたままで目を丸くする。
ライナ
ば、
ライナ
……………………あれは冗談だろーが
ルイ
…………!
彼はすぐに目を逸らした。

その耳が赤かったのは

秋雨の冷気のせいだろうか。
ハツ
っ…
胸に飛び込んできたその少年は
傘もささずに泥だらけになりながら
息を荒げていた。
ハツ
ナナっ…?
ナナ
………………て
ハツ
ん?
ナナ
………どっか連れてって
ハツ
っ……え?
ナナが俺の服を掴んだ。

想定よりも何重も強い力に驚く。

しどろもどろになりながらも
ナナを屋根の下に寄せ顔を覗いた。
ハツ
っ………?
彼は泣いていた。

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