第92話

愛への眼差し
33
2023/12/11 07:28
セツ
…………
窓際の席でカルノを眺めていた。

秋も深まり、文化祭も展示で終了。

本校の方へはあまり足を運べなかった。

10月18日。

やっぱりこれで良かったんだ。

そう心の内で呟いて、数日前のことを思い出した。
セツ
カルノ。お前、雨音の件の後に
俺に言ったこと覚えてるか?
カルノ
…………どれ?
セツ
…………あなたの下の名前を守れってやつ
カルノ
あぁ……あれね
カルノは一瞬戸惑いの色を示した。

とうとう来てしまったかとでも言わんばかりの顔だ。
カルノ
……………………
カルノ
ごめ
セツ
あれはやめにしよう
カルノ
っ……、………おぉ……
…………セツが言うとは思わなかった
セツ
まぁ…お前が身を引いたら、あなたの下の名前が不安になるだろうし
カルノ
…………
カルノ
……………………へー?
カルノは呆気に取られたような顔をした後、
にやにやと笑みを浮かべて俺を見た。
カルノ
僕のことそんな風に思ってくれてたんだー
へー?恋敵みたいな奴なのに?ん?
セツ
うん
カルノ
、……ぉぅ…………………ま………………ありがと
セツ
(正々堂々か…)
あなたの下の名前を見る。

俺がこうして今いるのは

君がずっと照らしてくれたから。
ルイ
ライナー、帰ろ
ライナ
おぅ
今日は曇天らしい。僕は教室の窓から空を見上げた。
ナナ
ハツ、今から晴れるよ
ハツ
できねえよ
ルイ
…………
僕はライナと門をくぐる。

大体ここで3組に別れるのだが、
今日僕はこの後ライナの家に遊びに行く。
ライナ
ルイお前SRのさ___
ルイ
あぁ、あれ特攻ヤバくない?あのーあれ、あの装備がさ_____
他愛のない会話。

平穏。

搾取されることのない世界。






_________全ては繁栄、そして彼らの為。

_________これを“愛”と呼ぶのだろう。



ライナ
…………ルイ?
ルイ
えっ?何?
ライナ
…………いや、泣きそうになってるから……
ルイ
…………え?嘘?
思わず頬に手を当てる。

目元に力が入っているのがわかった。

………言葉では表せない感情が渦巻く。
ライナ
………おい俺がいるのに何してんの
ライナは笑って僕を慰める。

といっても泣いてはないんだけど。
ルイ
うん…多分、“呪い”だ。すぐ収まるよ
ライナ
おー。俺はここにいるんだから何でも言えー
僕の先祖の遺した呪い。

血を通して伝わる罪の意識。

愛への冒涜。
ルイ
…………ライナ
ライナ
何?
ルイ
…………手、繋いでもいい?
ライナ
…………
ライナ
……………………うん


僕は君が好きだ。

だからこそ言うのが怖い。

これを失うことが怖い。


でももしそれが怖くなくなったら


僕は君に愛を誓う。



ライナ
………

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