第93話

彼は策士です
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2023/12/17 10:20
ルイ
僕告白しようと思うんだ
ハツ
………おめでとう。で?それで今何回目?
ルイ
…………だって、ライナは僕のこと意識してないじゃん
ハツ
お前さぁ…
昼休み。ここは旧校舎の図書室だ。

今は本という本はなく、勉強机と棚が置かれてあるだけの
ただの寂しい部屋となっている。
ルイ
………僕はライナとの日常だけあれば良かったんだ
ルイ
…………いや今もそう。怖いし、壊したくない
ハツ
………お前何がそんな不安なんだよ。
“愛”が怖くなくなるまで___って、いつになりゃいい?
ルイ
…………………うん……もう11年だ。
………いい加減逃げんなってね
ハツは僕の顔を見つめる。

そしてスマホを取り出して言った。
ハツ
………わかってんなら話は早い。
要はライナと向き合えばいいだけだろ?
ルイ
…………うん…うん、そう!それ!
………………向き合って確かめればいいんだ
ハツ
じゃ、この後俺の家で勉強会な。
ライナも誘った
ルイ
……………………えっ嘘、早っ、え?
僕は立ち上がりハツのスマホを覗き込む。

そこには既にライナの承諾があった。

そしてさらにハツは画面に文字を入力する。
ハツ
善は急げっていうだろ?
あとルイ、ライナと買い出し頼んだ
ルイ
えっありがとう。
えっ二人で?ハツは?
ハツ
俺は掃除。
あ、あと今日俺ん家誰もいねぇから
ルイ
わーーありがとう!
ハツはスマホから顔を上げにやりと笑った。

僕は心の隅にある不安に蓋をして、足を軽く弾ませた。
ライナ
じゃ、ばいばい
あなた
ばいばーい
カルノ
駄菓子屋行くべ
セツ
行くべ
ルイ
ライナー、行こー
ライナ
おう
放課後になり、僕らは正門を出る。

今日も変わらず曇天で、僕は小さなため息をついた。
ライナ
何買う?ポテチ?チョコ?
ルイ
あとコンビニケーキ欲しい
ライナ
すげー贅沢
活気のある商店街を肩を並べて歩く。

____________僕は変わるんだ。

そう言い聞かせる。
ライナ
…………ルイ
ルイ
ん?何?
不意にライナが口を開いた。
ライナ
…………6年前のこと覚えてる?
ルイ
…………あぁ
ルイ
今日か
僕らは歩みを止める。

6年前のこの日、僕らは溝に落ちた。
ライナ
…………誘拐された俺を1番に助けようとしてくれたのは
ルイでしょ?
ルイ
…………でも犯人は死んだ
ルイ
………犯人の屋敷も燃えた
ライナ
……………………そうだね
沈黙がこの場を支配する。

あの日革命軍は屋敷へ突入して、
ファーストの抵抗によって激化して、
そして全て燃えてしまった。

命を幾つも溢零してしまった。
ライナ
…………でも、ルイがいなきゃ今の俺はいないんだよ
ライナ
……………………だから
ライナ
…………そんな不安そうな顔しないでよ
ルイ
…………!


ライナは静かに笑ってみせる。








言葉では表せない感情。




今わかった。








_____________この愛は正しい。
ハツ
はいらっしゃっせー
ルイ
お邪魔しまーす
ライナ
邪魔すんなら帰ってー
ハツ
ほな帰るわー
ルイ
違うじゃん
日は傾き、ビニール袋を持つ手は赤くなる。

そろそろ秋も本番だなと僕は内心呟いた。
ハツ
…………ルイ
ルイ
ん?
ハツ
………すっきりした顔してんな
ルイ
…………
ルイ
うん!
今なら自信を持って言うことができる。

僕はライナを愛してる。

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