その日だって、本当になにも変わらなかった。
ただ、いつもと同じように、太陽が登る。
…でも、本当に、ほんの少しだけど。
寒かった…そんな気もした。
PVP終わりのとある夕方で、もう日が少しずつ落ちていって、辺りをオレンジに染めていた。
すとさんをあと一回つつけば落とせるというところで落下したくまさんは、もう救いようがないようだ。
わいわいと話しながら山頂へと向かう。
冷たい風が、少しだけ吹いた…そんな、気がする。
それでも気の所為だと頭を振って忘れて、三人の後をついていった。
ご飯を食べ、お風呂に入り、全て済ませて布団に入る。
直前まで枕投げをしていたばむととめためるは、PVPの疲れも相まってすぐに寝てしまったようだ。
すとも午前中の畑仕事で疲れがたまり、ばむめたのすぐ後に夢の中へ入っていた。
しかしくまめいぷるは、今日の風のことをを未だに考えていた。
そのせいで時々神妙な顔になり、三人から「らしくない」と言われる始末。
確かにかなり黙りこくっていたので、まぁ彼を知っている人なら誰でもおかしいと思うだろう。
考え事をしているせいか、もう寝ようと思っても目が冴えてしまう。
結局、日を跨ぐことになりそうだ。
かちり…かちり…時計の音が、嫌に響いて彼を焦らせる。
かちっ…0時になった瞬間だった。
冷たい風が思い切り吹いてきた上、ものすごい寒気が入ってくる。
大急ぎで窓に駆け寄ってばたんと閉める。
…全員あの強風で起きたようで、目を擦っている。
突然怯えたような表情になる。
もう聞くのが怖い。でも聞かなければならないと、恐る恐る言う。
怯えながら、勇気を振り絞って振り返る。
そこは、一面のギンセカイだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!