______昔の夢を見た。
私の両手を誰かが優しい手付きで握っていて
私は幸せそうに笑っていて………
私の手を握っている貴方は…一体誰なの?
顔にモヤが掛かっていて何も分からない
でも…私は絶対にこの人を知っている
もしかして貴方は______
目尻を擦った指が微かに濡れている。
もしかして…寝ながら泣いてたの…?
in生徒指導室
冬弥side
あの時、俺が理科室の近くに居たのは偶然じゃない。
事が起きる数分前、俺はクラスの女子にこう言われた。
その女子生徒は心無しかニヤニヤと笑いながら
俺をそう急かした。
席を立ち、職員室に向かう。
一階にある職員室に行く為に通る階段の隣には、
理科室がある。
そしてその理科室の前を通り過ぎようとした瞬間
…という悲鳴が響く。
何事かと思い、理科室のドアを開け、
恐らく声の出処の理科準備室のドアを勢い良く開ける
そしてそこにあなたと腕から血を流す椎名が居た…
_____と、言う流れだ。
俺は例えあなたが本当に切っていようが切っていまいが関係無いし、もし切ったのだとすればそれだけ俺の事が好きだと言う事になる。
そう考えるだけで自然と口角が上がる。
そっちのほうが、俺にとって都合が良い。
普段からあまり怒らない、大人しいと評判だった
月音宮先生が、眉間にシワを寄せ、こちらを静かに睨んでいる。
この先生は、あなたの事になると何時も感情的になる。
…一体、どういう関係なんだ?
先程まで余裕そうだった冬弥の笑顔が一瞬にして崩れる
目を見開き、空いた口が一向に塞がらない。
バン!と生徒指導室の扉が閉まり、その部屋には
冬弥が一人座り込んでいる。
冬弥はズボンのポケットに入ったスマホを取り出し、
ある男に電話を掛ける。
ピ、と通話の切れる音が静かな生徒指導室に響く。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!