ふるふると肩を震わせながら、冬弥に抱きつき、
泣き真似をする椎名。
上手に嵌められたって事か…と納得し、
これで嫌われたら好都合なのでは…と考えていると
冬弥は自身に抱きついていた椎名を押し退け、
あなたを抱き締めた。
そういや良く考えたら
コイツら人殺ってるんだった……
困惑する椎名だが、冬弥はそんな事は気にも止めず
あなたに愛を伝える。
あなたを抱き締める力を、更に強める。
すると冬弥は、あなたの腕を見た瞬間血相を変える
あなたの右手に誰かに強く掴まれた様な痣がある。
先程まで目にハートを浮かべ、
生き生きとしていた冬弥の顔に影がかかる。
黙っていると、冬弥は自己解決をしてしまった。
冬弥がギロリと睨んだ先には、椎名さんがいた。
冬弥に軽蔑した様な目を向けられた椎名は、
絶望し、その場に崩れ落ちた。
今までの光景を見れば、誰でも思うはずだ。
“なんて酷い光景なんだ”と。
正論を言われ、言葉が詰まる冬弥
喋っているのが自分じゃ無いようだ。
何も考えていないのに、言葉がつらつらと出てくる
すると、冬弥は俯き、あなたを弱々しく抱き締めた
なんと、泣き始めてしまった。
捨てないでくれって…そもそも拾ってないよ(
心の中でそうツッコミながらも
膝を付き、「捨てないで」と縋り付きながら泣く姿を見ると罪悪感が芽生えてくる。
椎名さんがそう言った瞬間、
頭の中で何かがプツン、と切れた。
光のない目で椎名を見下ろすあなた
椎名は顔を青くし、
そさくさと理科準備室から出て行った。
隣を見ると、目にハートを灯して
こちらを見つめる冬弥。
腕をぐい、と引っ張られ、頭を後ろから抑えられる
二人の唇が重なった。
あなたは冬弥の胸板を叩いて拒絶するが
冬弥はキスにがっつき、全く気にしていない様だ。
何度も角度を変えてキスをする。
あなたも体に力が入らず、抵抗もしなくなってしまった。
それを受け入れてもらえたと勘違いした冬弥は
あなたの口内に舌をいれた。
冬弥はあなたとのキスに夢中になり、
あなたは既に体力が尽き、疲れ果てていた為
この理科準備室に向かってくる一つの足音には
気が付かなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!