第88話

朝な夕なに色も香も→*こってりへ
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2024/05/17 01:59



〈事務所スタッフ〉
「じゃ、気を付けて。何かあったらすぐに連絡」

〈事務所スタッフ〉
「カメラは充分気を付けて。いいね?」

 


テヒョンが退院した数日後。

7人がそれぞれ、
ひと月程の休暇に入った。



ゆっくりと実家に帰るメンバー。
家族や仲間と旅行をするメンバー。

非公式のお休み期間なので
皆が皆、目立たないように
安全な方法でそれぞれ行方をくらませた。










🐰
「え?何?もう一回言って?」


テヒョンとジョングクも
出来るだけ人目につかないように

なかなか上手い具合に
飛行機で飛び立って、

更に、
海路や陸路を楽しみながら
何日もの時間をかけて

あの〃白い扉〃の本物がある
地球の向こう側の国を目指した。



どんな時も〃安全に最短で〃を目標に
仕事で海外を移動して来た2人にとって

このプランはそれはそれは堪らなく
優雅で魅力的な、

自由を唄う2人旅だった。




🐻
「ん?」
🐰
「もう一回。なにそれ、どういう事?」


只今、この2人は
大型客船でVIPな船の旅の中。

夕暮れの海風が2人を包んで
兎にも角にも、贅沢で心地いい。



アジアから遠ざかる程に
乗船する人々がどんどん入れ替わって

ここまで離れてしまったら
今やもう、2人が誰だかもわからない。




🐻
「どういう事って…そのまま」
🐰
「そのまま?何が?どうして?そのまま?」



早めのシャワーを済ませた2人が
個室の中のバルコニーに腰掛けて。

半乾きのテヒョンの髪が
サラサラと海風になびく。

ジョングクの大切な恋人は
あいも変わらず、今日も美しい。




で。
この会話。


旅行前に
宿舎のベッドで繰り広げた
2人の片想い中の〃答え合わせ〃再び。


🐰
「ヒョンお願い、もう1回。もう1回しっかりとわかりやすく言って?」

ジョングクはたった今知った
〃とある事〃に軽くパニック中。


🐻
「えっと…だから…」
🐰
「うん」
🐻
「グガとのキスの方が、先ってこと。」
🐰
「え?何?先?誰より先?」
🐻
「……誰って、その……レイの時より先。」
🐰
「は??え??」
🐻
「俺の中では、レイのあの件はキスじゃないよ?あれは口使って闘っただけ。」
🐰
「……うん。」
🐻
「でもグガ、結構気にしてるみたいだから。グガが2番目みたいに思ってるじゃん、いつも」


ついにテヒョンと
恋人同士になれたジョングクは

愛を紡ぐ心の糸車の車輪を
大型のダンプ並みにモデルチェンジして

最大積載量10トン超えの
〃独占欲〃の糸を搭載した。


🐰
「いや気にしてる、って言うか」


10代半ばから2人して
ピュアに片想いを貫いた2人は
いわゆる恋愛のアレコレの階段は

全部が全部、初体験。


そんなワケで
独占欲が爆発中のジョングクは

当然テヒョンの全ての〃初めて〃を
自分のものにしたかったけれど。


🐰
「めちゃめちゃ気にしてます。」
🐻
「ほら。」


何となく、いやかなり
テヒョンがレイに付けられた
あの唇の噛まれた傷が忘れられず。


どうにもこうにも
〃先に盗られた案件〃として
それをカウントしてしまうようで。



テヒョンの唇にキスをするジョングクは
必ず最初にテヒョンの唇の端っこを

〃根こそぎ掃滅〃する様な目で
撫で撫でと指で触ってしまう。








🐻
「だから、初めてのキスはグガとしたって事。グガが覚えて無いだけで。」


ジョングクがお酒に酔いながら
高熱の風邪をひいたあの夜の

〃ハジメテのチュウ〃の真相を

テヒョンが勇気を出して
話してみる事にした。



🐰
「え、何、それあの日?俺がヒョンに風邪を伝染しちゃった時?」
🐻
「ん。そう。あの日の夜。」  
🐰
「どこまで??何をどこまで??」


予想はしていたけれど。

案の定。
ジョングクはあの夜の事を
1ミリ足りとも覚えてはいなかった。





🐻
「水飲ませようとしたら、グガが引っ張ってきて。そのまま。で、舌出してって、グガが」
🐰
「は??下??」
🐻
「そうじゃなくて!口の中の舌!」
🐰
「舌??そんな濃いやつ??」
🐻
「酔ってたから、グガの力がめちゃめちゃ強くて」
🐰
「何それ、羽交い締め?」
🐻
「ん。そう。で、服脱いでって俺のシャツまくって、グガの手が中に入って来て」
🐰
「ええ?それ完全に襲ってるじゃん!」


内容が内容だけに
話しているテヒョンの方が
だんだん恥ずかしくなってきた。


🐻
「でも、そこまで。そのままグガが寝ちゃったから。俺の服まくって。お腹の上で。」
🐰
「うわ……何それ、俺最悪じゃん」
🐻
「だから、本当はグガが最初。俺の初めてのキスはグガ。ってかもう、恥ずかしいからこの話終わり。」


ジョングクに
衝撃の爆弾を落とした後
テヒョンの顔が夕陽を超えて赤く染まった。


🐰
「ほんと?それ本当に本当?」
🐻
「本当に本当。ヒョン達も知ってるよ?お前昨日ジョングクに襲われただろーって。」
🐰
「は???」


沈没中のジョングクに
テヒョンから2発目の爆弾、投下。


🐰
「何それ??どう言う事??」 
🐻
「俺が話した訳じゃ無いよ?お前が無理矢理、俺の首にキスマつけたの!だからバれたの!」
🐰
「それ、もしかしてあの、」
🐻
「そう。あの…虫刺され」


🐰
「だから、虫退治………」


2発のハイレベルな爆弾を喰らって
ポカーーンと驚くジョングクの顔に

テヒョンがブハッと吹き出して笑った。


🐻
「全部グガだよ。初めては。だから落ち込むのもう終わり、……わ、」


恥ずかしそうに話を〆るテヒョンを
ジョングクが抱きしめる。


🐰
「今すぐキスしたい。」
🐻
「え、何そのヤキモチみたいな顔。」
🐰
「だって、上書きしないと」
🐻
「ん?上書きって、全部グガがした事……あ、ちょっと」

🐰
「記憶に無い俺にヤキモチ焼いてるんです。だから、上書き。」
🐻
「は??……あ、もう、グガ……んんっ」






客船の中の一番高いスイートだから
中は普段使う様なホテルを有に越える
ラグジュアリーな広さで

リビングやバルコニー付きの
兎にも角にも贅沢なお部屋。

海のど真ん中を動くので
朝も昼も夕暮れも夜も
目が眩む程に美しい
オーシャンビュー。

🐻
「んっ…ん…グガ…、息出来な…、」

人目も気にしないまま
ゆったりと海を満喫出来る、

2人にとって
実に幸せな空間だった。





🐰
「どんな風に、した?」

唇と唇がくっついたまま
ジョングクがテヒョンに質問をした。

瞬きをする度に
お互いの長いまつ毛がくすぐり合う。

🐻
「え……?どんな?」
🐰
「初めてのキス。覚えてないから、ヒョンがやってみせて?俺に。」


テヒョンが薄目を開けると
伏せたジョングクの整った瞳が
テヒョンの唇を狙うように見つめていて、

その色香を纏った姿に
テヒョンの欲が騒ぎ出した。


🐻
「どんな風…って……その…」
🐰
「して見せて?今。」
🐻
「え、あ……グガ、」

ジョングクがテヒョンを
軽々と抱き上げて

バルコニーの扉を閉めて
広いベッドに連れて行った。


柔らかいシーツに沈むテヒョンの
明るい色の髪を撫でながら、

🐻
「…んっ」

ジョングクが
テヒョンの頬や額やあちこちに
優しくて甘いキスを落とす。



🐻
「……好きだよ、グガ」

蕩けた目をして
テヒョンがジョングクを見た。

🐰
「愛してるよ、ヒョン」




もちろん、
この状況でこの2人が
キスだけで終わるなんてあるワケも無く。


海とは違う波のリズムで
テヒョンがジョングクに
甘く揺らされる時間が始まった。










*****************

いつもお読み下さり
ありがとうございます。

またも次回から数話、こってりⓇです。
Ⓡなのでフォロワー様限定です🙏

Ⓡを読まなくても
本編のお話は繋がります。
NGな方はくれぐれも閲覧をお控え下さい。


まだUPしておりません💦
数日以内にこちらから更新します。
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