新学期が始まり、文化祭に向けて慌ただしい日々が続く9月の半ば。
佐渡先輩とはぎこちないまま、月日だけが流れていく。
久しぶりに奈緒先輩と2人で、まだ夕日のまぶしい帰り道を歩く。
私と佐渡先輩がぎこちないの。
図星。
そう言って苦笑いしてその場をしのごうとした、それも奈緒先輩は分かっていたみたいだ。
奈緒先輩の優しさに涙がこぼれる。
先輩が背中をさすってくれる手が暖かくて、心地よくて、私の目は壊れた蛇口のように水を流す。
奈緒先輩に引っ張られるようにして、駅とは反対方向の路地へ折れる。
そこは、公園とも言えないような小さな空き地で、錆びた鉄棒とベンチだけが置かれていた。
奈緒先輩の隣に座ると、今までの思いが涙となってあふれていく。
先輩は何も言わず、ただ横に座っていてくれた。
どれくらい経っただろうか。
唐突に奈緒先輩が声を上げた。
私の涙は収まって、ベンチから立ち上がる。
文化祭はもちろん。
恋愛とか友だちとか、全部。
先輩に迷惑なんかかけていられない。
いつのまにか日が沈みきった道を、先を行く奈緒先輩を追いかけるように歩いていく。
気づけば文化祭当日。
私たち吹奏楽部は文化祭のオープニングを飾ることになっていた。
あれから少しずつだけど佐渡先輩と話すようにして、今では1学期くらいまで戻れたんじゃないかと思う。
♬♬♬
あっという間に演奏が終わってしまい、なんだか寂しく感じられる。
そう言いながら佐渡先輩の手が私の方へ近づいてくる。
これって、もしかして……。
頭の上に大きな手が触れる。
たった一瞬なのに心臓がバクバクと音を立てる。
そして佐渡先輩はどこかへ歩いていく。
いつまでも頭の上に残る暖かい感触。
私、やっぱり、先輩のこと 好きなんです。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。