春高の試合に負けた冬の終わり、受験も佳境に差し掛かったある日の放課後。
黒尾とあなたは、学校近くの静かな公園のベンチに並んで座っていた。
夕焼けが二人の影を長く伸ばし、冷たい風が頬を撫でる。
黒尾は、手に持った缶コーヒーを一口飲み、ふっと息をついた。
「なあ、あなた。……進路、もう決めた?」
あなたは少しだけうつむき、手袋越しに自分の指をいじる。
『……うん。私、やっぱり心理学を勉強したいから、○○大学を受けようと思ってる。』
黒尾はその言葉に、どこか納得したように頷いた。
「そっか。……あなたらしいな。」
あなたは黒尾の顔をそっと見上げる。
『鉄朗は? やっぱり、バレーが強いとこ?』
黒尾は少しだけ笑って、空を見上げた。
「まあな。俺はやっぱり、バレーを続けたいし、スポーツ科学も学びたいから、△△大学にしようと思ってる。」
あなたはその答えに、少しだけ寂しそうに微笑んだ。
『……やっぱり、違う大学になっちゃうね。』
黒尾はあなたの肩にそっと手を置き、いたずらっぽく笑う。
「まあ、そうなるよな。
……でもさ、あなたがやりたいこと見つけて、それに向かって頑張ってるの、俺はすげーと思いますよ。」
あなたは照れくさそうに笑い、黒尾の手に自分の手を重ねる。
『鉄朗だって、ずっとバレーに真剣で、夢に向かってるの、私もすごいと思う。
……でも、やっぱりちょっと寂しいな。』
黒尾はあなたの手をぎゅっと握りしめ、真剣な表情になる。
「なあ、あなた。
……俺たち、これからは今までみたいに毎日会えなくなるかもしれない。
でもさ、離れてても、ちゃんとお互いのこと信じて、応援し合える関係でいたい。」
あなたは黒尾の言葉に、じんわりと胸が温かくなるのを感じた。
『うん。私も、鉄朗のこと信じてる。
……離れてても、ずっと味方でいるから。』
黒尾は少しだけ照れたように笑い、でもその目は真剣だった。
「あなた。……俺、バレーも勉強も全力でやる。
だからあなたも、自分の夢に向かって全力で頑張れ。
……お互い、ちゃんと自分の道を歩いて、また胸張って会おうぜ。」
あなたは涙をこらえながら、力強く頷いた。
『うん。……絶対、また笑って会おうね。』
黒尾はあなたの頭を優しく撫で、少しだけ声を落とす。
「……寂しくなったら、ちゃんと連絡しろよ。
俺も、たまには甘えに行きますから。」
あなたはくすっと笑い、黒尾の肩にもたれかかる。
『うん。……約束だよ。』
夕焼けの中、二人はしばらく黙って寄り添っていた。
それぞれの夢に向かって、違う道を歩き出す決意を胸に――。
黒尾は、ふとあなたの耳元で囁く。
「なあ、あなた。
……俺たち、離れてても最強のコンビだろ?」
あなたは涙を拭いながら、笑顔で頷いた。
『うん。……最強のコンビだよ。』
二人の未来は、まだまだこれから。
それぞれの夢を追いかけながら、またいつか、もっと強くなって再会する日を信じて――。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!