第11話

episode3 ③
14
2021/12/01 04:03
紫衣羅
紫衣羅
とりあえず、自己紹介でもしておこうか

グレーの髪の男の人が突然そう言ってきた。



こんな状況で自己紹介など、呑気なものだと第三者の目からするとそう思われるけど、これも何かの縁だろうし、とりあえず名前ぐらいは知っておいて損はないだろうと、それぞれ自己紹介する事になった。
紫衣羅
紫衣羅
俺は紫衣羅〈しいら〉
先程と同じようにグレーの髪の人から挨拶をする。
碧斗
碧斗
俺は碧斗〈あおと〉。
可愛い子なら大歓迎だよ?

次にかわいい顔のした男の子が挨拶をする。



最後の方、よく分からない言葉が発されたけど、気にしない方がいいのだろうか。
朱笆
朱笆
彼の事は気にしないでくださいね。
僕は朱笆〈あかは〉と言います、
よろしくお願いします
そんな事を考えていると、綺麗な顔立ちの男の人が私に気にしなくていいと伝え丁寧に自己紹介をする

紫衣羅
紫衣羅
で、こいつがーー
恣枦華
恣枦華
恣枦華〈しろか〉
紫衣羅
紫衣羅
で、君は?
名前はさすがに覚えているよね・・・・?
紫衣羅さんはこれまでの私の状況に、さすがに心配になったのか、尋ね方が少しよそよそしさがある。
沙紅芦
沙紅芦
えっ・・・・と
(名前・・・・名前・・・・・・・・)

私も少し心配なりつつも、一応記憶を思い出そうとした。
沙紅芦
沙紅芦
沙紅芦〈ざくろ〉・・・・・・・・
気がつくと、私はそう口にしていた。
紫衣羅
紫衣羅
沙紅芦?それが君の名前?
私の口にした名前に紫衣羅さんは確認するように、もう一度聞きに入る。

沙紅芦
沙紅芦
・・・・・・・あ、はい!そうです!
沙紅芦
沙紅芦
(そうだ、私の名前は沙紅芦だ)
なぜ記憶を失っているのかは全くわからないが、先程までは自分の名前にも自信がなかったものの、名前だけはちゃんと確信があったのだった。
紫衣羅
紫衣羅
それで、どうするかな・・・・この状況
朱笆
朱笆
ドアありますけど、鍵が掛かっていて開かないようですね
碧斗
碧斗
鍵、ないのか・・・・
私達がいるこの部屋には、扉はあるが鍵が掛かっている為、開ける事ができない。



しかも肝心な扉の鍵はなく、そもそもこの部屋には何も置かれていないので、鍵さえもない。



更にもっと言うとならば、窓もなくどこからも開ける手段がなく、閉じ込められた状態と言っても過言ではない。
沙紅芦
沙紅芦
・・・・・・
沙紅芦
沙紅芦
(どうすれば出れるんだろう・・・・)
ふとジャケットに付いているポケットに手を入れる。

沙紅芦
沙紅芦
(!)
手を入れると、ポケットに何かが入っている事に気付き取り出す。

沙紅芦
沙紅芦
・・・・・・これは
ポケットに入っていたのは、可愛らしいデザインのされた六角形のコンパクトミラーの小物だった。
沙紅芦
沙紅芦
(コンパクトミラーだよね、これ)
沙紅芦
沙紅芦
!?

その直後、何かが頭をよぎったのだった。




゛刻が来るまで開けてはいけませんよ゛
沙紅芦
沙紅芦
(刻・・・・・・・・?)
そういえば、ここで目を覚ます前、誰かにそんな事を言われていた気がした。

沙紅芦
沙紅芦
誰だっけ・・・・
なぜそんな事が頭をよぎったのかはわからないが、もしかしたら゛刻゛というのは今なのかもしれない。


なんとなくだがそんな事を思った。


もしかしたら、開けたら何かが起こるのかもしれない、この不可解な状況も分かるのかもしれない。

紫衣羅
紫衣羅
どうかした?
沙紅芦
沙紅芦
あ、紫衣羅さん
コンパクトミラーをじっと見つめて色々考え込んでいたら、紫衣羅さんが私に近付き声を掛けてくれる。


紫衣羅
紫衣羅
何か考えでもある?
沙紅芦
沙紅芦
えっ
唐突に尋ねられ少し驚くものの、すぐにコンパクトミラーに目線を落とす。



もし違っていたらどうしようかと思うけど、試す価値はあると思う。



私は戸惑いながらも、紫衣羅さんにコンパクトミラーを見せた。
沙紅芦
沙紅芦
これ・・・・
紫衣羅
紫衣羅
これは?
沙紅芦
沙紅芦
ここで目を覚ます前に誰かにもらったような気がするんですけど、誰かはわからなくて
戸惑いを持ちながらも、紫衣羅さんに説明する。

紫衣羅
紫衣羅
もしかして、思い出した?
沙紅芦
沙紅芦
あ、いえ。なんとなくだけで
紫衣羅
紫衣羅
そっか
今の私の言葉に思い出したのかと思われたけど、決して思い出した訳ではなく、単になんとなくだから思い出したとは言えない。

沙紅芦
沙紅芦
それで、これ鏡になっているみたいなんです
紫衣羅
紫衣羅
あーコンパクトミラーか
沙紅芦
沙紅芦
はい
その後の話しからは、少し途切れ途切れに内容をつなげていった。

沙紅芦
沙紅芦
なんか゛刻が来るまで開けてはいけない゛って言われて。でも、それって今な気がするんです。ただ、何が起こるのかわからないんですけどね
紫衣羅
紫衣羅
そっか、じゃあやってみたらいいじゃない?
沙紅芦
沙紅芦
・・・・・・えっ
紫衣羅さんは考える素振りも見せる事もなく、軽い感じで答えた。

碧斗
碧斗
うん。俺もそう思う
沙紅芦
沙紅芦
気がつくと他の3人も私に視線を向けられていた。



悩むようにまたコンパクトミラーに目を移すと、その様子に紫衣羅さんが助言を与えるように言葉を出してくれる。
紫衣羅
紫衣羅
可能性があるのならやってみたらいいんじゃないかな?たとえ、それが違っていても、次の方法のヒントになるのかもしれないしね
沙紅芦
沙紅芦
・・・・・・・そうですよね
紫衣羅さんの言うとおり、なんらかの可能性があるのなら実行するべきだ。



もしかしたら、何かのきっかけに繋がるのかもしれない。


沙紅芦
沙紅芦
(うん)
私は紫衣羅さんの言葉を信じ、コンパクトミラーを開ける事にしたのだった。


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