そんなやり取りしながら店を出る。
このままホテルに戻るのは少し名残惜しくて、二人で宛もなく歩く。
さっきの事をまだ根に持っているのか、アラスターはさっき私が悪魔とぶつかった肩に手を回し、何度も撫でている。
もう何ともないのになと思いつつも、必死になって撫でているアラスターが可愛いのでそのままにしておこう。
歩いていると、いつかの時に立ち寄った広い公園のような場所に辿り着いた。
今日は何組かのカップルが集まっているようで、公園内では楽しそうに談笑しているカップルの姿が見える。
突然名前を呼ばれ、アラスターへ向き直る。
頬に手を添えられ、熱の篭った瞳で私を見るアラスターの顔がゆっくりと近付いてくる。
小さく笑ってから、目を閉じて彼を受け入れようとした……その時。
心底困った顔をした悪魔が、地図を片手にオロオロした様子で話しかけてきた。
振り返り、彼の話を聞くとどうやら道に迷ってしまったらしい。
地図を一緒に見ながら、今いる場所と抜け道を伝えていると、けたたましいノイズ音が辺りに響き渡った。
目の前の悪魔や、周りにいたカップル達が一斉に耳を塞いで苦しみ出す。
アラスターへと向き直ると、案の定物凄い形相で怒り狂っている。
近寄ると同時に触手に引き寄せられ、離さないと言わんばかりに抱きしめてくる。
背中に手を回し、アラスターの目を見ながら私は静かに問いかけた。
焦点のあっていなかった瞳が、グルンと私を捉える。
良かった、ちゃんと言葉は通じているようだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。