第42話

第四十一話
192
2024/04/20 11:16
そんなやり取りしながら店を出る。

このままホテルに戻るのは少し名残惜しくて、二人で宛もなく歩く。

さっきの事をまだ根に持っているのか、アラスターはさっき私が悪魔とぶつかった肩に手を回し、何度も撫でている。

もう何ともないのになと思いつつも、必死になって撫でているアラスターが可愛いのでそのままにしておこう。

歩いていると、いつかの時に立ち寄った広い公園のような場所に辿り着いた。

今日は何組かのカップルが集まっているようで、公園内では楽しそうに談笑しているカップルの姿が見える。










(なまえ)
あなた
みんな楽しそうだね
アラスター
……あなた
(なまえ)
あなた
ん?









突然名前を呼ばれ、アラスターへ向き直る。

頬に手を添えられ、熱の篭った瞳で私を見るアラスターの顔がゆっくりと近付いてくる。

小さく笑ってから、目を閉じて彼を受け入れようとした……その時。










モブ悪魔
すみません、ちょっと道聞きたいんですけど……










心底困った顔をした悪魔が、地図を片手にオロオロした様子で話しかけてきた。

振り返り、彼の話を聞くとどうやら道に迷ってしまったらしい。

地図を一緒に見ながら、今いる場所と抜け道を伝えていると、けたたましいノイズ音が辺りに響き渡った。

目の前の悪魔や、周りにいたカップル達が一斉に耳を塞いで苦しみ出す。









(なまえ)
あなた
……アラスター








アラスターへと向き直ると、案の定物凄い形相で怒り狂っている。

近寄ると同時に触手に引き寄せられ、離さないと言わんばかりに抱きしめてくる。

背中に手を回し、アラスターの目を見ながら私は静かに問いかけた。








(なまえ)
あなた
アラスター、私を見て?
アラスター
……ジジッ






焦点のあっていなかった瞳が、グルンと私を捉える。

良かった、ちゃんと言葉は通じているようだ。

プリ小説オーディオドラマ