ゆきりぬへ
突然の手紙を許して欲しい。これを見てる頃には俺はもう引っ越しているだろう。俺も内心びっくりしている。あの日の電話で俺はこう母さんに伝えられた。″俺の将来嫁になる人にこっちに来るように言われたから、早く準備しに帰ってこい″と。俺は頭が混乱したよ。「将来の嫁?」「準備?」そして帰った後詳しく聞いたんだ。「俺たち家族の会社が下手したら倒産しそうだから、東京のご令嬢と結婚して欲しい」って言われた。俺の気持ちも聞かずに話を進めて正直断りたかった。でも、それは出来なかった。だから、こんなことになったんだ。きっとゆきは信じてくれないだろ?「何で早く言ってくれなかったんだ」って…………ごめんな。お前との約束も果たせずに…。本当に情けねぇ…。もっとお前と話せば良かった。もっとお前と出かければ良かった。もっと…お前の笑顔を見とけば良かった。そんな後悔ばかりだ。これからは俺がいなくても他の友達と話せよ?お前が元気にいることで俺も安心できるよ。ゆきりぬ。俺はお前の事好きだ。この気持ち直接伝えたかった。けどもう伝えることが出来ないからここに残すよ。今までいい青春をありがとな。
はなお
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〜数年後。ゆきりぬは高校を卒業し、ウエディングプランナーに勤めた。〜
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__________えぇ〜速報をお伝えします。
今日午前4時頃に女性社員と思われる遺体が○○式場の所に発見されました。警察は死因などを調べており…………________
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!