肩の傷から入った毒による痺れは、次第に腕や背中に広がっていった。解毒しなければいずれ使い物にならなくなるかもしれない。
しかし、もうそんな事は俺には関係無かった。
屋敷の北側に広がる、一切手入れされていない林をひたすら走って進んだ。おぼつかない足を必死に動かし、半ば転びそうになりながら草木をかき分けた。
一体なんでこんなことになった?
また俺のミスだ。俺がそばにいなかったばかりに、不甲斐ないばかりに。
許嫁どころか、祖母からも狙われていることに気づかず。
あげく、ルークの命まで失ってしまった。
ミレーユの側近の警備員を斬り殺した時に湧き上がった激しい怒りは、自分に対するものでもあった。
だが、今はあの燃える様な感情は消え、代わりに雨の中一人で突っ立っているかの様な静かな後悔が襲っていた。
この仕事を始めた時、あなたの下の名前と出会った時からわかっていた。
向いていない事など。
何度も考え、周囲からも指摘されていた。気づいていたはずだった。
それなのに、俺はこの仕事を辞めることはなかった。
その理由は……………………。
木々の隙間から、古ぼけた建物が見えてきた。
全ての元凶の場所、あなたの下の名前の家族が殺された別荘だった。
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シャルルは素敵な笑みを浮かべた。
あなたの下の名前が連れ去られる時、ルークを殺した道化師と本物のシャルルが自分の前に現れた。てっきり本物のシャルルは味方かと勘違いしそうになったが、結局シャルル自身もあなたの下の名前の誘拐計画に加担していたのだった。
一度眠らされてここに運び込まれ、目が覚めた時には道化師は姿を消していた。
あなたの下の名前にわかることは、この部屋が地下であることと、自分一人では逃げられないことだけだった。
身じろぎしようにも、両手を後ろに縛られ身動きが取れない。
自分の安否が目の前の男に委ねられていることへの恐怖が、あなたの下の名前を支配していた。
負けじと反論すると、少しの沈黙が訪れた。
突然、シャルルがあなたの下の名前の顔を平手で叩いた。衝撃で横に倒れたあなたの下の名前の髪を掴み、無造作に顔を上に向けた。
苦痛と怒りに歪んだあなたの下の名前の顔を覗き込み、凍るように冷たい目でシャルルは語った。
どす黒い笑みをシャルルは浮かべた。
プチ、と頭の中で何かが切れる音がした。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。