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第51話

43話
55
2026/03/31 04:05 更新
肩の傷から入った毒による痺れは、次第に腕や背中に広がっていった。解毒しなければいずれ使い物にならなくなるかもしれない。


しかし、もうそんな事は俺には関係無かった。



屋敷の北側に広がる、一切手入れされていない林をひたすら走って進んだ。おぼつかない足を必死に動かし、半ば転びそうになりながら草木をかき分けた。
リアム
……あなたの下の名前…あなたの下の名前…っ。


一体なんでこんなことになった?




また俺のミスだ。俺がそばにいなかったばかりに、不甲斐ないばかりに。


許嫁どころか、祖母からも狙われていることに気づかず。


あげく、ルークの命まで失ってしまった。


ミレーユの側近の警備員を斬り殺した時に湧き上がった激しい怒りは、自分に対するものでもあった。


だが、今はあの燃える様な感情は消え、代わりに雨の中一人で突っ立っているかの様な静かな後悔が襲っていた。
リアム
…馬鹿だな、初めからわかっていた事だろうが。
この仕事を始めた時、あなたの下の名前と出会った時からわかっていた。


向いていない事など。


何度も考え、周囲からも指摘されていた。気づいていたはずだった。


それなのに、俺はこの仕事を辞めることはなかった。



その理由は……………………。
リアム
……あれは。
木々の隙間から、古ぼけた建物が見えてきた。


全ての元凶の場所、あなたの下の名前の家族が殺された別荘だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



シャルル
この地よりはるかに遠い島国では、俺たちには理解し難い魔術が栄えていたらしい。
あなた
………
シャルル
その中でもひときわ魔術の才能に優れた娘が、この地に住む男と結婚し子孫を残した。
娘の魔術は、青い目の光により人々を洗脳するというものだった。
シャルル
その光を適当な石に浴びせると、自ら青く光るブルーダイヤに姿を変えるんだそうだ。その石もまた、人を洗脳する力を持つってわけだ。
シャルル
その魔術を持つ娘の子孫…それがお前というわけだ、あなたの下の名前。
あなた
…私がその力を使えるとでも?
シャルルは素敵な笑みを浮かべた。
あなた
そんな事より、私を攫った道化師はどこ?
…あなたに化けて屋敷に潜入して、ルークさんを殺した、あの道化師。
シャルル
お前が知る必要はない。まあ強いていうなら高みの見物ってやつだろうな。
あなたの下の名前が連れ去られる時、ルークを殺した道化師と本物のシャルルが自分の前に現れた。てっきり本物のシャルルは味方かと勘違いしそうになったが、結局シャルル自身もあなたの下の名前の誘拐計画に加担していたのだった。


一度眠らされてここに運び込まれ、目が覚めた時には道化師は姿を消していた。



あなたの下の名前にわかることは、この部屋が地下であることと、自分一人では逃げられないことだけだった。
身じろぎしようにも、両手を後ろに縛られ身動きが取れない。

自分の安否が目の前の男に委ねられていることへの恐怖が、あなたの下の名前を支配していた。
シャルル
まあ心配するな。必要が無ければ痛めつけるつもりはない。
あなた
…私をどうするつもり?
シャルル
ひとまず、お前をゾペロニアから遠い地方に連れて行く。そこで俺たちの商売に協力してもらうさ。
あなた
協力なんてする訳ない。
負けじと反論すると、少しの沈黙が訪れた。


突然、シャルルがあなたの下の名前の顔を平手で叩いた。衝撃で横に倒れたあなたの下の名前の髪を掴み、無造作に顔を上に向けた。

苦痛と怒りに歪んだあなたの下の名前の顔を覗き込み、凍るように冷たい目でシャルルは語った。
シャルル
勘違いするなよ。
お前は初めから選択できる立場に居ない。
シャルル
何のために六年前お前の家族を殺したと思っている。
何のためにあの胡散臭い道化師と手を組んだと思っている。
何のためにラコロンドに多額の金を払ってまでブルーローズを手に入れたと思っている。
そのブルーローズで、お前の祖母や警備員たちを洗脳したのも、全てはお前を手に入れるための計画だ。

ここまでしたというのに、まだお前は俺に手間をかけさせるのか?
あなた
…………は…?
…全部……あなた達の仕業だったの…?















シャルル
今頃気が付いたのか?
どす黒い笑みをシャルルは浮かべた。




プチ、と頭の中で何かが切れる音がした。








あなた
……………殺してやる…
…殺してやるっ………絶対に……!!

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