pr side
映画館から出た瞬間、けちゃが明るく振り返った。
反射的に言い返したけど、実際、泣いてた。
というか、あいつの方がもっと泣いてたくせに、バレてへんとでも思ってるんか。俺の袖、ずっと握って鼻すすってたのに。
けちゃは俺の顔をじっと覗き込むと、「うわ、絶対泣いてる顔だ〜」とニヤニヤ笑った。
その笑顔に、なんか心臓がギュッとなった。
子どもみたいな顔して、俺の手をつかむけちゃ。
その手は、映画の中で握ってきたときと同じで、少し震えていた。
ほんとはこいつも、映画の内容にやられてる。
悲しかったんやろな。
優しいから、誰かが死ぬ話とか苦手なんよ、こいつ。
俺はけちゃの手をそっと握り返して、言った。
俺の笑顔はきっと、ちょっとだけ意地悪だったと思う。
その日の夜。
あっきぃ主導で、次の動画収録のスケジュールを話すための会議が始まった。DISCOには、ちぐさ、あっと、けちゃ、まぜ太、そして俺。いつもの6人が揃っていた。
あっきぃの第一声に、けちゃは「あ〜!」と嬉しそうに声を上げた。
ちらっと、まぜ太の反応をうかがう。
彼は少し遅れて入ってきて、マイクをオンにしたまま無言だった。
でもその「無言」は、俺にははっきり伝わってた。
やっぱり、まぜ太は怒ってる。
映画に、けちゃと俺が行ったことも──けちゃが、まぜ太じゃなくて俺を選んだことも。
ふいに、まぜ太がミュートになった。
けちゃが「まぜち〜?聞いてた?」と呼びかけても、返事はない。
ちぐさの冗談めいた声に、けちゃはきょとんとしていたけど──
俺は知ってた。
まぜ太があんなふうにミュートするのは、本気で不機嫌なときだけ。
──数日後。
まぜ太から、珍しく俺に個チャが来た。
まぜ太にそんなこと言われるなんて、思ってもみなかった。
返した後、既読がついたまま、まぜ太は何も言ってこなかった。
その夜、けちゃがふわっと俺に通話をかけてきた。
けちゃの声には、少しだけ寂しさが混じっていた。
多分、けちゃも気づいてるんやろな。
自分が誰かに、想われてることも──でもそれに気づかないふりをしてることも。
そんな言葉を、こんな夜に投げかけるなんて。
あいつ、ほんま罪やな。
あぁもう。ほんと可愛くて、愛しくて、ぎゅってしたくなるくらい好きや。
To be continued…












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!