‐数日後‐
今日は、待ちに待った…いや、やってきてしまったテスト返しの日。
忘れかけていた約束を思い出す。
〝全教科満点〟
ちなみに今日はレオ君は欠席だったので、1番最初に結果を見せるのは両親だ。
名前が呼ばれた。
僕はテストを受け取った。
僕は、呼吸を整え、今回の結果を見た。
大丈夫、あれだけ勉強したんだ。きっと…。
学力テスト 受験日 ◯年☓月△日
あなたの結果
国語/98
数学/72
社会/95
理科/97
英語/98
男女別/3位
全体順位/3位
全教科満点どころか、満点が一つもなかった。
その上、全体順位も3位。
数学の点数が他の教科に比べて低い。
毒を喰らったせいなのか?それとも実力不足?
思いがけない結果に脳の処理が追いつかない。
〝全教科満点〟
命令を果たせなかった。また、迷惑をかけることになるだろう。冷や汗が止まらない。期待にも添えなかった。
‐ワイワイガヤガヤ…‐
言葉が出ない。
そんなにミスをしてしまったのか…?
周りの目線が怖い。自分と比較される発言が飛び交う。
こんな空間にいたくないよ…レオ君…。
彼の姿を脳内に描く。彼は自分がどれだけ迷惑かけても態度の一つを変えやしなかった。自分よりも、ずっとずっと優れていた。彼の事が好きだ。でも、もう恋は叶わない。
じゃあ、自分はこれからどうしたらいいのか。
分からない…。今はただ、この空間を投げ出したい。
我儘を言えば、レオ君に会いたい。
誰も…邪魔する人がいない場所で彼に会いたい。
気がつけば、授業は終わっていて、下校の時間になっていた。重りが巻き付けられたような足を引いて家に向かう。
2つの希望が同時に消えさった。今は、何にもない闇の中を彷徨っているだけ。当然、希望の光なんて見えない。
そして、1番身体が重たく感じた時、家の前に立っていた。
微かに震える手をドアノブにかける。
‐ガチャッ🚪‐
学力テストのことだろう。
僕は、恐る恐る、結果を渡した。
その声は、まるで、僕に失望したような声だった。
ラルカ。僕の兄だ。
兄は、僕が小学二年生の時に、高校2年生という若さで亡くなった。年の差はあったが、仲は良かった。
兄は、テストを受ければ毎回100点で、学年1位の座は絶対に譲らなかった。
兄がいつも優しくしてくれたのは覚えていた。勉強を教えてくれたり、相談に乗ってくれた。
兄が亡くなってから、両親はラルカのおかげで薄れていた出来損ないの僕に強く当たるようになった。しかし、死因は不明。ずっと謎だった。誰かに殺されたのかもしれない。この時に、救いの手を失った。
‐ガチャッ🚪‐
そっか。僕は要らない子だったんだ。
何故だろう。涙が溢れて止まらない。
僕は、優れているところなんて一つもなかったんだ。だから捨てられた。
でも…愛されたかった。つらい時に甘えたかった。誰かに必要とされたかった。心の限界に気づいてほしかった。
どれだけ頑張っても報われなくて、学年1位が当たり前で。
何度も無理をして体調を崩した。休憩なんてない。いつでも仮面を被って生活していた。そして…自分を見失った。
居場所はもうない。
なら、兄の元に行こう。
僕は、とある場所に向かって走り出した。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。