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第1話

晴れた日の、出会い。[come-aCROSS@Sunny-Day]
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2025/01/03 20:03 更新
ある世界線。

クッソ深い森の、更に奥。

そこに俺、きんときの棲家すみかはあった。



吸血鬼の両親から生まれ、この世にでた時には吸血鬼ヴァンパイア

ひとや森の生命エネルギーをドレインしつつ、争いを好まない家系というのもあって、あまり誰かや何かを襲うということも、なく。

人間界の食物と、エネルギーの吸収っていう、混合ハイブリッドタイプの生き方で、穏便に、普通に、森に隠れ住むようにして暮らしていた。


そんな、ある日。

よく晴れて、気持ちのいい陽気。

俺は、のんびり本でも読もうかと、その羽を広げて、お気に入りの廃墟へ向かった。
森の奥から、少し離れた、見晴らしの良い丘の廃墟。

そして、そこに居る先客に、驚いた。

「…………あれ?誰か居る……?」

大きな荷物。登山でもするのか?

彼は、廃墟の石壁と石柱が、ちょうどテーブルと椅子のように、うまい具合に崩れている場所に、自分のお弁当を広げていた。


の光に照らされて、くるんとした金色の髪が輝いてる。

黒いふちどりの、大きな眼鏡メガネ

そばには、とてもキレイに整理された荷物と、簡単な食器。

ひとりなのに、ちゃんとお弁当のおかずを並べて。

ピクニック……というより、おままごとでも、してるみたいだ。


向こうも俺に気付いて、まさに人でないものをた、という顔で、驚いた。

「え、お前、何……!?こんな、ところで」

「……それは、俺のセリフなんだけど」

読もうとしていた本を片手に、超軽装マルハダカの俺は、万全装備おおにもつの彼とは真逆だった。

「ヒト……!?いや、まさか、そんな軽装で、こんな場所、来れるわけないよな……!?」

「…………俺は、吸血鬼」

どうして正直に言ってしまったのか、分からない。

彼には、初対面なのに話しかけやすい、不思議な人あたりのよさがあった。


「……吸血鬼!?」

「……うん、まぁ、一応」

「いちおう!?いちおう、吸血鬼!?」


更に目を真ん丸にするので、なんだか、可愛かった。

きちんとした青年なのに、可愛いって表現はおかしいだろうか?

でも、可愛いが一番相応ふさわしい気がした。


「まぁ、隠れ住んでるし。別に、人とか襲わないんで。
君こそ、なんでこんな場所に居るの?」


「俺は聖職者。神父なんだ」

青年は、胸元から十字架のネックレスを出して見せた。


今度は俺が驚く番だ。


「…………神父!?吸血鬼の、天敵じゃないか。」

「そう、そうなんだよな。……この廃墟、実は古い教会なんだよ。
かつて、この森の奥に、教会があったって聞いたんだ」

「……ここが教会…?…そういえば、確かに」

「神父として、教会の遺跡に興味があって。
ここの場所を、何となく聞いて、見つかればラッキーと思って、はるばる散策してたんだ」

重装備にお弁当の意味が分かった。

天敵の聖職者、と聞いても、彼に攻撃の意志がないので。
俺からすれば、ピクニックしている登山者ぐらいの雰囲気だった。

向こうも同じなのか、本を片手にまるでノンキな俺に、全く敵意がないのを見てとって、俺たちは、ごく普通に会話した。



「お前、ホントに吸血鬼なの?全然ヒトにしか、見えないなぁ」


「羽でも出してみる?」


俺は、飛ぶとき以外は隠している羽を背中から伸ばしてみせた。


吸血鬼の、黒い羽……。


コウモリの羽のような、闇の色のそれを、怖がるかと思いきや。
彼は逆に目を輝かせた。


「えっ、スゲエ!!翼!?ドラゴンみたい。お前、カッコいいな!」

「かっこ……いい?」

「カッコイイ~!こんなん、ドラゴンじゃん。
俺もこんな翼、やしてみたいわ。翼竜よくりゅうって感じ。すげーなあ」

こういうの、禍々まがまがしいって言うんじゃないの?

ひとは、み嫌うものだと思っていたけど。


彼は目をハートにする勢いで、俺の翼に触った。

「恐竜みたいにも見える。俺、小さいころ恐竜博士になりたくて。
やっべー、これ本当に飛べんの?」

「飛んでみようか」

「飛べんの?」

「そりゃあね。一緒に飛ぶ?君を抱えても、飛べるけど」

「一緒に飛べんのぉーっ!?」

それ、最高じゃん!!!
彼はいっそう、キラキラしたで喜んだ。
ぎゅむむ。

警戒心より、知的好奇心が、完全に勝っている、神父。

俺にギュッと抱きついて、子供がおねだりするように、俺を覗き込む。

「はやく飛んでぇ!」

……なんだコイツ。か、かわいい!
この神父、無防備で、ちょっと天然入ってないか?


「一応、言っておくけど。
飛行中にさっきの十字架や、もし持ってるなら、聖書とかを使われると、俺もノーダメージではいられないから。
2人で墜落するからね?」

「そんなこと、するかよ!」

折角の、機会チャンスを。

別に攻撃された訳でもないし。

神父は、心外だッと言わんばかりに否定する。



「あと、もうひとつ。
君にダメージはないけど、吸血鬼はヒトに触れると、生命エネルギーをもらってしまう」

「生命エネルギー?」

「吸血鬼と呼ばれるゆえんだね。血を吸う訳じゃなくて、こちらにチカラが供給される」

「俺にダメージはないの?」

「無いね。ヒトから放出されてるものの、おこぼれをいただくみたいなものだね」

「じゃあいいよ。別に。吸ってもいいよ。
俺なんにもしないから。お前もなんにもしないでね。」


「うん、それで。じゃあ、飛ぶよ。ちゃんと捕まって?」

「あ!!!」

「…………何?」

ここまで来て、突然、彼は思いついたように、はにかんで、言った。



「……俺。重かったらゴメン。」



「………………はァ!?」

……ぶはははははは!!

俺は吹き出した。
なんだ、それ!

「魔力が、あるから。ある程度は重力を無効化キャンセル出来るから、大丈夫。」

気にするところ、ちがくない?

もっと色々、他の部分を怪しんだりしてもいいと思うけど。

心配するのが、自分の体重って。

俺は笑いながら、神父を抱きしめて、飛んだ。
飛び上がって、視界が開けたときの、彼の興奮といったら、なかった。

『スゲー!』を連発。

『うわー』とか、『こんな風に見えんだー』とか、『マジで最高じゃん』とか。


「あ、俺の教会!俺の教会が見える。
あの小さい十字架の塔、ほら、あそこ!」

はるか向こう、視界の端に、小さな集落が見えて、その村はずれと森の境目に、小さい教会が見えた。

「君、あんな遠くから歩いて来たんだ……」



神父が風景に気を取られて、わぁわぁと大騒ぎしている間。

俺は、間近まじかに抱きつかれている彼の顔を良く見てみた。

そして、その顔がとても綺麗で、整っていることに気が付いた。


分厚ぶあついレンズのせいで、眼鏡メガネの印象が強すぎるけど、大きな瞳がまばたきするたびに、長い睫毛まつげが一緒に揺れる。

眼鏡を支える鼻筋は、すっきりしていて、楽しげな声を弾ませる唇は、猫みたいに、ふにゃん、とした形。

とても好ましい顔をしていた。


風に揺れる、ふわふわな金の巻き毛。

ほぼ無意識に彼を抱きしめ直すと、服ごしに分かる、やわらかい身体。

全部が、好印象だった。



地上に降りても興奮冷めやらぬ彼に、俺はなんだか、嬉しくなる。

「スッゲー!ありがと、ほんとにいいもの見た!」

「そりゃあ、良かった」

たいしたことしていないんだけど、と付け加えると、

「たいしたことだよ!サンキューな!」


輝く笑顔が、ほころんで。


俺は、心から、よかったと思った。


「名前、教えてくれる?」

「そうだ!まだ名乗ってねーじゃん。俺は、きりやん。
ずっと向こうの教会で、神父をしてる」

「俺はきんとき。吸血鬼。」

空から降りたあとも、俺たちはたくさん話をした。


きりやんは博識で、様々なことに深い造詣ぞうけいを持っていた。

大好きな恐竜の話、俺自身も知らない羽の構造とか、空から見たこのあたりの地形と、地層と、気候の説明。

もの知りで、楽しそうで、説明はとても分かりやすかった。



俺も彼の話を熱心に聞いたし、彼も熱心に話し続けた。



かたむいて、彼が、帰ってしまうまで。


きりやんに抱きつかれていたところから、彼の生命エネルギーを感じる。


きよらかで、温かい。

優しくて、ぽかぽかとしただまりみたいなエネルギー。


きりやんになんのダメージも無いし、彼は気付いてもいなかった。

ひそやかな、吸血行為エナジードレイン




早く飛んで欲しくて、ぎゅぎゅっと無防備に抱きついてきたくせに、直前になって、
「俺、重いカモ……」だって。


俺は思い出して、プッ、と吹き出した。
なに、それ。

あいつ、へんなヤツ!
本当にへんなヤツ。

きりやん。


「……きりやん」


俺は声に出して、彼の名前を言ってみた。

もう一度、彼の笑顔を思い浮かべる。

顔が赤くなる。指先まで。胸がすごい音で鼓動した。





「きりやん、って言うんだ……」




その名前は、特別に大事なもののように、俺の心に響いた。


続く
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