季節は、少しずつ春へと向かっていた。
街の桜が咲き始めて、風が優しく吹き抜ける。
あの日から、もう一ヶ月。
俺は今日も撮影現場に立っていた。
変わらない声。
でも、その瞳の奥には、あの日とは違う強さが宿っていた。
休憩中、ポケットから小さな紙片を取り出す。
それは――あなたの下の名前の手紙の、最後の一行。
『亮平くんの未来が、ちゃんと輝きますように。』
あの日から、何度も何度も読み返した言葉。
読むたびに泣いて、でも少しずつ前を向けるようになった。
空を見上げる。
雲の切れ間から光が差して、まるで彼女が笑っているようだった。
声に出すと、涙がまたこぼれそうになった。
でも、今度は拭わなかった。
その涙も、彼女との時間の証だから。
――きっと、どこかで見てる。
――あの優しい笑顔で。
俺はそうつぶやいて、もう一度前を向いた。
カメラが回る。
照明が灯る。
彼は光の中へ歩き出した。
それは、悲しみを超えて、彼女の願いを胸に生きる人の姿だった。
🌸END











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。