痛む足を無理矢理動かして、鏡舎に向かって必死に走る。
“お前に死んで欲しいからだよ“
そう言われた瞬間、俺は逃げた。
背後から何か聞こえたが、どうせ罵倒だったのだろう。
結局俺は、言葉に振り回される人間だったんだ。
甘い柔らかい言葉に惹かれ、鋭い言葉から逃げる。
自分の寮に逃げ込み、自室へ入ろうと角を曲がった瞬間だった。
誰かとぶつかってしまった。
顔を上げると、そこには副寮長であるヴァンルージュ先輩が不思議そうな表情をして立っていた。
“どうせ弱いからそんな風になってしまうんだろ?”
また呼吸が止まる。
頭を勢いよく下げ、またヴァンルージュ先輩から逃げるように自室へ入り込んだ。
扉を閉め、背をつけてその場に座り込む。
もう、限界だった。
鋭い言葉が俺の傷を抉る。
何かが溢れてきて止まらない。
止めて。
止めて。
...止まらない。
流れ出ていくものを必死にかき集めても手から抜け落ちる。
“死ね死ね。そうだよ、そのまま死ねよ”
やめて
“ほんと滑稽な姿だなぁ!!”
やめろ
“ばーか、お前なんか人間のゴミなんだよ!!”
これ以上、俺を...っ
傷つけないで。
俺の意識はそこで途切れた。
目が覚めた瞬間、体に激痛が走った。
床で意識を失ったせいか、昨日より痛みが鋭くなっている気がする。
なんとか身体を起き上がらせて、ぼーっと窓の外を見つめた。
___限界、なのか。
俺はひび割れたマジペンを自分自身に向けて、小さく言葉を唱えた。
ガラスがひび割れるような音が響いたと同時に、俺の心へ何か温かいものが流れ込んでくる。
けれどその温かさはどこか歪で、汚いもののような気がした。
思い切り咳き込み、折れた箇所が軋み、傷口に痛みが走る。
“頑張れ”
“大丈夫”
“きっと上手くいく“
柔らかい言葉なのに、なぜか痛い。
気付かないほどの小さな針がちくちくと刺してくるような、そんな気分だった。
必死に自分を鼓舞して、揺らぐ視界に立ち向かう。
今日も”頑張ろう“。
”大丈夫“俺ならいける。
”大丈夫“...
今にも壊れてしまいそうな緑色の宝石は、既に黒く染まろうとしていた___
To be continued
2026/07/05誤字修正












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。