第13話

Ep.12 … 2017.12 A Long-Forgotten Promise 途中から🐺視点
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2026/02/11 04:36 更新



短いですが、ファイナルミッション終了後の話を1つ書きました。
下記の注意書きをお読みの上、読んでくださったら嬉しいです。


※こちらのお話はプロローグを読んでからでないとわかりにくい話となっています。

※オリジナルキャラとの話になりますので、苦手な方はこのまま飛ばしていただけたら、と思います。











生放送終了後、控室には観に来てくれたメンバーたちの家族で溢れかえっていた。
何年も自分の息子たちを信じ続けてきた親御さんの涙に、一歩離れた場所に立つ俺の目尻にも熱いものが込み上げてくる。

その中でも、静かに父親と母親の腕の中で涙を流すクリスの背中に、「ああ、本当に俺はこいつと一緒に夢の第一歩を踏みしめられたのだ」という実感が湧いて、じんわりと喜びが広がっていく。


同時に13歳のこいつを遠い国に送った親御さんの気持ちが、夢の中の母親である彼女の気持ちとリンクして、切なさに胸が締め付けられる。どんな気持ちでその手を離し、小さな背中を押して見送ったのだろう。


上へ下へと急上昇と急降下を繰り返す心に、もう見ていられない、そう思った俺は、ぎゅっと拳を握って、控室を出ようと扉に近づいた。


「うわっ!」


ドアノブに手をかけようとしたところで、外から中へ扉が開いた。驚いて身を引けば、大柄な男性が中に入ってくる姿がスローモーションのように見える。


「あなた!」


懐かしい声が響いて、顔を上に向ければ、さらに驚きに目が見開く。別れたときより年を重ねているけれど、見間違うことはなかった。


「ミニョギ...ヒョン」
「久しぶりだな、あなた」


ニカッと嬉しそうに笑う顔が、一気に俺の心を何年も前に引き戻す。あの頃の頼もしいヒョンが目の前にいることが分かって、堪えていた涙がポロリと頬を伝う。


「うわっ!あなた야, 울지 마〜.」


そんな俺を見て、わたわたと慌て出すミニョギヒョン。
次から次へと溢れる涙に呆然としていれば、ヒョンの太い腕がぐいっと俺の腕を引いて、その硬い胸板に抱きしめられた。ぎゅうぎゅうと押しつぶすかのように遠慮のない力で抱き込むヒョンに、思わず「うっ」と息が止まりかける。
ハッとして、どんどんと胸を叩けば少し腕を緩めてくれた。


「ヒョン、どうして?」
「お前らの、サバイバル、ずっと観てたよ。最後にヒョヌヒョンが声をかけてくれたんだ。お前とチャニに会いにきてくれないかって」


俺の頭をガシガシと撫でながら、そういうヒョン。


「久しぶりすぎるよ、ヒョン...」


俺がそういえば、ヒョンは申し訳なさそうに目を細めて「ごめんな。思ったより、時間がかかっちまったよ」と答える。


俺はもう一度ミニョギヒョンの背中に腕を回して、自らぎゅっと抱きついた。
この日、俺を祝いに来てくれる家族はいなかったけれど、代わりにとんでもないサプライズをヒョヌヒョンからもらってしまった。


「チャニ...」


ミニョギヒョンの呟く声に上を見上げれば、俺を越えたその先を嬉しそうに見つめるヒョン。ヒョンの視線を辿れば、両親の間に立ち、唇を噛みしめてヒョンを見つめながら泣くクリスがいた。


「あいつにも、謝らないとな」
「え?うわっ!ちょっと待って、ヒョン!」


苦笑したミニョギヒョンは、俺がとめる暇もなく、勢いよく俺を担ぎ上げ、そのままクリスのほうに向かっていく。いくらヒョンのほうが背が高くてガタイがいいからといって、19歳でこの扱いは結構恥ずかしい。


「ヒョン!俺降ろしてから行ってくださいよ!」
「俺らの再会は3人揃ってないとだめだろー!」


ヒョンは俺の言葉なんかには耳をかさずに、ガハガハ笑いながらクリスに直進していく。そんな俺らのやりとりをさっきまで感動に身を包んでいたメンバーたちとその家族が、目を丸くして見つめている。


「チャナ!」


俺たちを見つめたまま1ミリも動けないクリスに、ミニョギヒョンは大声で名前を呼んで、担ぎ上げた俺ごとクリスを抱き上げる。その勢いに、驚いたクリスの両親が慌てて横に飛び退くのが横目に見えた。


「ヒョン......」
「よ、チャニ。よくやったな。本当に上出来だよ」


ミニョギヒョンの腕の中で、クリスの震える声が響く。
そんなクリスをぎゅっと抱きしめながら、ミニョギヒョンは誇らしそうにそういった。


「あなた、チャニ、デビューおめでとう。お前らのデビューに立ち会えて、嬉しいよ」


その見た目に反してとても優しいヒョンの声に、一度緩まった涙腺はなかなか締まってくれなくて、俺とクリスはまた少し、ヒョンの腕の中で涙を流してしまった。




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🐺視点




ようやく情緒が落ち着きを見せたころ、俺とあなたはミニョギヒョンを挟んで、控え室の椅子に座り込んだ。
ミニョギヒョンを知らないメンバーたちは、俺たちの再会を最初は不思議そうに見ていたけれど、今は距離をあけて放っておいてくれている。


「ヒョン、今日は会いに来てくれて、ありがとうございます」
「礼ならヒョヌヒョンに言えよ。今や一般人の俺がここまで入ってこれたのはあの人のおかげだからな」
「はい、必ず伝えます」


静かに口を開いたのは俺で、自分の口元が緩やかに上がり、自然とほほえみがこぼれていることに気づいた。このヒョンとの再会は、それほど嬉しかったんだ。


「ヒョン、このあと時間あるでしょ?お祝いに飯おごって」
「任せろよ。俺とヒョヌヒョンで店、予約してある。俺らはお前の韓国での親代わりだからな」


反対側に座ったあなたが、冗談半分だったのだろう、にやりと笑ってそう言えば、ミニョギヒョンはニカッと笑って当たり前のように答える。それを聞いたあなたの目が一瞬揺れたのを、俺の横目が捕らえた。


デビューがかかったファイナルミッションの会場で、メンバー全員の親が応援に駆けつけた中、あなたの両親の姿はなく、あなたもまた当たり前のようにそれを受け入れていた。

あなたと出会ってから6年が経つけど、あなたが日本に帰国したのは今まで数えるほどで、その目的も、ビザ関係の手続きが主で、家族に会いに行ったという話は聞いたことがない。

以前あなたと生活費の話になったときに、どうしているのかと尋ねたら、「今のところ会社に果てしない借金をしてるな」と笑って答えていた。
あなたはなんでもないことのようにサラッと言ったけど、13歳の子供が借金を背負うという事実に、当時衝撃を受けたのを覚えている。


「진짜 고마워요, 형님.」
「おう、敬え敬え〜(笑)」


ミニョギヒョンの言葉に、あなたが顔を背けて言う。赤く染まった耳を見て、ミニョギヒョンの心底楽しそうな声が続く。
ミニョギヒョンとヒョヌヒョンの存在は、同い年の俺では手が伸ばせないあなたの問題を、しっかりと支えてくれる柱だった。そんな2人の姿を見て、本当に、心の底からほっと息をつく。


「あなた、チャニ、ドユニのことなんだけどな」


先ほどまでとは違い、真剣な声で話し始めたミニョギヒョンの口から出た名前に、あなたと俺の間に緊張が走った。


「俺、今でもあいつと連絡取ってるんだ。あともう少ししたら、お前らにも会えると思う。そしたら、ヨンケイも忘れずに呼んで、酒、飲みに行こうな」


そういって、俺とあなたの肩に腕を回して引き寄せたヒョンが静かな声で言う。
昔、何度も交わした約束を、ドユニヒョンが去ったあの日に、どこかに消えてしまったあの約束を、ヒョンたちは今も覚えていてくれたのだ。


「ヒョン、約束、ですよ」


そういったあなたの声は震えていて、両手で顔を覆うあなたの肩を、ミニョギヒョンがきつく抱きしめる。


「もう、破ったら、ダメですよ」
「おう、わかってるよ。約束だ」


何度も繰り返せば、その約束が今度は消えてしまわないと信じるかのように、あなたはしつこくミニョギヒョンに問いかけた。そのたびにヒョンは、呆れることもなく、真剣に、その約束を破らないと誓ってくれた。


散々泣いたファイナルミッションの日。
これまでの練習生生活も、サバイバルも、辛いことが多かった。
もちろん、デビューをしてからも辛いことは続くだろう。
今日はスタートの初めの一歩に過ぎないのだから。


でも、6年前出会った時のまま、俺の隣にはあなたがいて、あなたの隣には俺がいる。
俺たちの夢は、引き裂かれることなく、まだ共にある。


そして、ミニョギヒョンが固く誓ってくれたこの約束は、1年後に5人の笑顔とともに叶えられることになるんだ。


今の俺たちはまだ、そのことを知らないけれど。


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