第2話

ep_001
964
2026/05/17 12:50 更新




















宮瀬 あなた 
 ___ 次 、どうぞ 





     診療室の扉が開き 、
     制服姿の隊士が一人入ってくる

     否 、“ 連れてこられている ”
     と言った方が正しい 。


     肩を借りながら椅子へ座った隊士は
     右肩を押さえたまま苦い顔をしている .

     訓練中に転倒でもしたのか 、
     肘の辺りが大きく裂けていた 。




宮瀬 あなた 
 うわ 、派手にやったね〜 … 
 隊士
 笑い事じゃないですって … 
宮瀬 あなた 
 骨は ? 
 隊士
 多分無事です 





     いや 、多分って何 。

     私は小さくため息を吐きながら
     慣れた手付きで消毒液を準備する 。



     軍の医療施設に来てから数年 .

     怪我人を見ることには慣れた 。
     けど 、隊士達の大袈裟な反応には
     いつまで経っても慣れない




宮瀬 あなた 
 染みるぞー 
 隊士
 ちょ 、待っ 、 
 心の準備が ___ ッ !! 
宮瀬 あなた 
 うるさい 。 





     騒ぐ隊士を適当にあしらいながら
     傷口を洗浄する 。

     診療室には消毒液の匂いと 、
     隊士の情けない悲鳴だけが
     広がった


     ____ はずだった 。



     ふと 、妙な静けさを感じる 。

     さっきまで騒いでいた隊士が
     急に黙った 。




宮瀬 あなた 
 ? 





     不思議に思って顔を上げる .

     その瞬間 、診療室の入口に立つ
     男と目が合った 。

     長身 。金髪 。軍服姿 。


     ただ立っているだけなのに
     空気が張り詰める 。

     感情の見えない目が
     真っ直ぐにこちらを見ていた .




宮瀬 あなた 
 …… なに 





     思わずそう口にすると 、
     周囲の隊士が息を呑む気配がした .


     え 、何 。

     男は気にした様子もなく
     静かな声で言う




 スタンリー
 そいつの上官 





     低い声だった 。

     威圧してるわけじゃないのに
     妙に耳に残った .




宮瀬 あなた 
 あぁ … なるほど 





     付き添いか 。

     そう納得して視線を戻す 。




宮瀬 あなた 
 じゃあ静かにしてて 。 
 暴れられると危ないから 





     後ろで小さく空気が揺れた気がした .

     隊士たちが 、
     何か信じられないものを
     見るような顔をしている 。


     何なんだろう 、本当に ……



     私は気にせず処置を続ける .

     裂けた傷口を縫いながら 、
     「 次からは受け身くらい覚えて 」
     と言えば 、隊士は半泣きで
     「 善処します …… 」 と返した 。


     絶対覚えないやつじゃん …




宮瀬 あなた 
 はい終わり 





     包帯を巻き終え 、
     カルテを軽く記入する 。

     すると不意に視線を感じた 。


     顔をあげるとさっきの男が
     まだそこに立っていた .




宮瀬 あなた 
 …… 何か ? 
 スタンリー
 … アンタ 、随分 
 落ち着いてんじゃん 
宮瀬 あなた 
 軍医だから 
 スタンリー
 普通はもう少し騒ぐぜ 
宮瀬 あなた 
 … 騒いでも 、 
 怪我は治らないでしょ 





     そう返すと 、彼は数秒黙った
     その沈黙が妙に長く感じる .

     やがて彼は小さく目を細めた .

     それは初めて見る表情で 。
     笑ったわけではないけど
     僅かに空気が揺らいだ気がした 。




 スタンリー
 … 名前は ? 
宮瀬 あなた 
 ……… え 、 
 スタンリー
 アンタの名前 





     どうして名前を聞かれているのか
     分からない 。
     けど 、無視をするわけもなく
     私は自分の名前を答えた 。

     彼はそれを確かめるみたいに
     もう一度繰り返して小さく呟いた 。




 スタンリー
 スタンリー・スナイダーだ 





     そこで初めて彼の名前を知った 。

     同時に 、後ろの隊士たちが
     分かりやすく固まる 。


     スタンリー・スナイダー ……
     有名人なんだろうか 。



     よく分からないまま首を
     傾げているとスタンリーは
     視線だけをこちらに残したまま
     踵を返した 。

     軍靴の音が遠ざかっていく .


     そして診療室にいた隊士たちが
     一斉にこちらを見た 。




宮瀬 あなた 
 …… え 、何 ? 
 隊士
 宮瀬さん 





     一人の隊士が 、
     恐る恐る口を開く ____ .




 隊士
 今 “ あの人 ” に 
 普通に話しました? 




















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