診療室の扉が開き 、
制服姿の隊士が一人入ってくる
否 、“ 連れてこられている ”
と言った方が正しい 。
肩を借りながら椅子へ座った隊士は
右肩を押さえたまま苦い顔をしている .
訓練中に転倒でもしたのか 、
肘の辺りが大きく裂けていた 。
いや 、多分って何 。
私は小さくため息を吐きながら
慣れた手付きで消毒液を準備する 。
軍の医療施設に来てから数年 .
怪我人を見ることには慣れた 。
けど 、隊士達の大袈裟な反応には
いつまで経っても慣れない
騒ぐ隊士を適当にあしらいながら
傷口を洗浄する 。
診療室には消毒液の匂いと 、
隊士の情けない悲鳴だけが
広がった
____ はずだった 。
ふと 、妙な静けさを感じる 。
さっきまで騒いでいた隊士が
急に黙った 。
不思議に思って顔を上げる .
その瞬間 、診療室の入口に立つ
男と目が合った 。
長身 。金髪 。軍服姿 。
ただ立っているだけなのに
空気が張り詰める 。
感情の見えない目が
真っ直ぐにこちらを見ていた .
思わずそう口にすると 、
周囲の隊士が息を呑む気配がした .
え 、何 。
男は気にした様子もなく
静かな声で言う
低い声だった 。
威圧してるわけじゃないのに
妙に耳に残った .
付き添いか 。
そう納得して視線を戻す 。
後ろで小さく空気が揺れた気がした .
隊士たちが 、
何か信じられないものを
見るような顔をしている 。
何なんだろう 、本当に ……
私は気にせず処置を続ける .
裂けた傷口を縫いながら 、
「 次からは受け身くらい覚えて 」
と言えば 、隊士は半泣きで
「 善処します …… 」 と返した 。
絶対覚えないやつじゃん …
包帯を巻き終え 、
カルテを軽く記入する 。
すると不意に視線を感じた 。
顔をあげるとさっきの男が
まだそこに立っていた .
そう返すと 、彼は数秒黙った
その沈黙が妙に長く感じる .
やがて彼は小さく目を細めた .
それは初めて見る表情で 。
笑ったわけではないけど
僅かに空気が揺らいだ気がした 。
どうして名前を聞かれているのか
分からない 。
けど 、無視をするわけもなく
私は自分の名前を答えた 。
彼はそれを確かめるみたいに
もう一度繰り返して小さく呟いた 。
そこで初めて彼の名前を知った 。
同時に 、後ろの隊士たちが
分かりやすく固まる 。
スタンリー・スナイダー ……
有名人なんだろうか 。
よく分からないまま首を
傾げているとスタンリーは
視線だけをこちらに残したまま
踵を返した 。
軍靴の音が遠ざかっていく .
そして診療室にいた隊士たちが
一斉にこちらを見た 。
一人の隊士が 、
恐る恐る口を開く ____ .













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。