寮に近づくと、遠くからでも灯りが見えた。
ほんのりと温かい明かりが漏れ、そこに人のぬくもりを感じさせる。
玄関の戸を静かに開けると、広間からほんの少し笑い声が聞こえた気がした。
だがもう、柱たちの多くは部屋に戻っているようで、
茶の間には灯りだけがぽつんと残されていた。
三人でほのぼのとした空気の中、お茶とお菓子を味わっていると──
廊下の方から低めの声が響いてきた。
部屋の戸口から蛇柱様が顔を出す。
手にはタオルを持っている。
苦情を言いに来たはずの蛇柱様も、最終的にはお菓子をすすめられ、
しぶしぶ座って一口食べ、恋柱様に微笑まれて視線を逸らす──
蛇柱様が苛立ったように腕を組み、廊下の奥を睨みつける。
その時――
軽快な鼻歌混じりに、風呂場の引き戸が勢いよく開いた。
水滴が肩から落ちるほど、まだ湯気を纏った音柱様が、豪快にタオルで髪を拭きながら現れる。
しかし音柱様はまるで気にせず、キラリと笑って胸を張る。
水柱様は静かに来て、静かに去る。
心を開いてくれそうになくて少し落ち込む。
蛇柱様は早歩きで風呂場に向かわれた。
それから私と恋柱様の討論は長くに渡って続いた。
諦める素振りが見えないと、私が折れて様付けは禁止となった。


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!