空気がぐにゃりと歪み、今度は冨岡さんの前に「かつて救えなかった仲間たち」が現れる。
その幻影に目を奪われた瞬間、鬼の腕が冨岡さんの背に迫った。
私は反射的に飛び込み、刀でその腕を弾く。
衝撃が腕を痺れさせたが、なんとか防ぐ。
心臓が早鐘のように鳴る。
蛇柱様と冨岡さんが戦う後ろ姿を見て決心する。
(恐怖で立ち止まってたら、きっと誰も守れない……!
なら私は――夢を力に変える!)
しかし
幻覚はさらに濃くなり、もはや夢と現実の境が曖昧になる。
村の亡骸、家族の血の姿、仲間の絶叫――。
冨岡さんが静かな動きで周囲の腕を一瞬にして斬り裂き、空間を凪のように鎮める。
「 今だ⋯!!! 」
ふたりが同時に攻撃しているのに続いて
私も刀を握りしめる。
私は一歩、幻覚の渦の中へ踏み込む。
心の奥に、いつも見ていた“夢”を呼び起こす。
――仲間を守りたい。
――みんなが笑って生きられる未来を見たい。
刀を振りかざし、息を吸い込む。
刹那、夜空に幾重もの光景が重なり、私自身の分身が十重二十重に現れる。
幻覚を幻覚で覆い隠し、鬼の感覚を攪乱する。
鬼の仮面の瞳が驚愕に歪む。
本物を見失った鬼の動きが一瞬止まった。
三つの呼吸が一点に収束し、鬼の仮面を断ち割る。
パリン――と割れた仮面の奥から、鬼の本当の顔が露わになる。
その瞬間、三人の刀が同時に首へと届いた。
鬼は断末魔の声を重ねるように響かせ、やがて砂のように崩れていく。
伊黒さんが刀を収め、視線を逸らす。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!