夕闇が落ち、村を覆う闇がじわじわと濃くなる。
ひとつ、またひとつと灯りが消え、村は息を潜めるように静まり返った。
その時だ。
その瞬間――。
村の奥から、不気味な軋む音が響いた。
ガタン、ガタン……ズズッ……。
月明かりの中、ゆらりと姿を現したのは、異様な鬼だった。
顔には能面のような仮面をいくつも重ねており、笑う面、泣く面、怒る面が絶え間なく回転する。
背には蜘蛛の脚のような骨の腕が何本も生え、地を掻きながら歩いてくる。
蛇柱様の蛇が鋭く舌を鳴らす。
鬼の瞳にははっきりと「陸」の文字。
鬼は声を重ね合わせるように笑った。
瞬きする暇もないくらいの速さで冨岡さんが攻撃する。
水の刃が夜に煌めき、迫る骨の腕を切り落とす。
だが切断された腕はすぐに再生し、さらに数を増やして襲い掛かる。
蛇柱様が低くうねるように駆け、骨の腕の間をすり抜けながら首を狙う。
斬撃は首筋に届くが、仮面の層が盾のように防ぐ。
(私も……! ここで立ち止まってる暇なんてない!)
心臓を叩き落ち着かせ、刀を握り直す。
踏み込み、幻の分身をいくつも生み出しながら、仮面の間を狙って突きを放つ。
鬼の目がぎょろりと動いた。
私の刃は仮面の隙間を裂き、鬼の頬を掠めた。
黒い血がじわりと滲む。
思わず息を呑むが、鬼は舌で血を舐め取って嗤う。
骨の腕が幾重にも伸び、三人を取り囲む。
一瞬の油断も許されない。
二人の柱に挟まれ、私は息を整える。
(……狙われてるなら、逆に利用する……! 囮になって、首を斬る隙を作る!)
背後から鬼の声が迫った。
仮面の一つがぼたりと地面に落ちた瞬間――、
私たちの周囲の景色が歪んだ。
目の前に、見慣れたはずの村が血に塗れ、住人たちが鬼に喰われる幻覚が広がる。
耳には悲鳴、鼻には鉄の匂い。五感すべてを侵食する恐怖。
次の瞬間、私の目の前に現れたのは――亡き家族の姿。
血に濡れ、手を伸ばしてくる。
(違う、これは幻だって分かってる……でも……!)
刀を握る手が震える。
蛇柱様の声が鋭く飛んだが、その顔すら歪んで見え、私は一瞬足を止めてしまう。
そこを狙うように、骨の腕が一気に振り下ろされる。
咄嗟に刀を振り抜き、幻影の鎖を生み出して骨の腕を絡め取る。
ぎりぎりで防ぎ切ったが、全身が冷たい汗に覆われた。
鬼は一瞬動きを止めるが、すぐに別の仮面を外した。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。