山あいの小さな村に私たちは足を踏み入れた。
家々は板戸を閉ざし、まるで息を潜めるように静まり返っている。
蛇柱様が周囲を睨むように見渡し、低く呟く。
肩に乗る鏑丸も、チロリと舌を出して警戒していた。
私は二人の後ろを歩きながら、ふと唾を飲み込んだ。
(村人は……本当にまだ生きているのかな)
不意に蛇柱様の視線が私に向いた。
今度は冨岡さんが短く付け加える。
表情は変わらないけれど、その声音は妙に安心感をくれる。
私たちは三人で村の奥へと歩を進めた。
ところどころ、地面には大きな引きずった跡や、乾いた血痕が残っている。
村の奥へ進むと、閉ざされた板戸の隙間から、怯えた瞳がこちらを覗いていた。
冨岡さんが足を止め、静かに声を掛ける。
しばし沈黙があったのち、ギィ、と板戸がわずかに開き、中年の男性が姿を見せた。
顔色は土のように青白く、憔悴しきった様子だった。
村人は怯え、ちらちらと私たちを見渡す。
私はなるべく柔らかい声で口を開いた。
その一言で、男性の肩の力が少し抜けたように見えた。
私の背筋に冷たいものが走った。
(毎夜、人が消えてる……。じゃあ今夜も……!)
伊黒さんが鋭い口調で村人に言い放つ。
村人は深く頭を下げ、板戸を固く閉じた。
再び静寂が訪れる。
私は二人の横に並び、小さく息を吐いた。
茜色に染まった空がゆっくりと闇に沈もうとしていた。
言いかけた冨岡さんを、伊黒さんが遮る。
空気が一瞬だけ張り詰める。
ふたりの間に言葉にならない火花が散るのを感じて、私は慌てて口を開いた。
蛇柱様はそう言って視線を逸らす。
その横で、冨岡さんは少しだけ目を細めた。
刻一刻と夜が近づく。
私たちは村の中心にある集会所へ足を踏み入れ、戦いの時に備えてそれぞれの呼吸を整え始めた──。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。