瀬名さんとの撮影が終わり、1週間が経った。
SNSで僕と瀬名さんの目撃情報が拡散されて熱愛か、などと一時期騒然としていたけど広告が出てからは誤解だった、そもそも男だった…と鎮火したらしい
むしろこのちょっとした騒ぎのおかげで新商品の売上は好調のようだ。
それからもう1つ。
僕はSNSアカウントを作った。
きっかけは瀬名さんが
「これからもモデルの仕事したいなら個人アカウント作っといた方がいいよ。あ、でもあまり同じグループの子と一緒に撮った物はあまりあげないでよぉ?あげるのはモデルの仕事に繋がりそうなソロ写真だけ。」
と言うので言われるがまま作った。
作った直後からすぐにフォロワーが沢山つき、有難いことに1桁万のフォロワーがついた。まだお仕事は来てないけれど、そのうち来るのも時間の問題だろう。
…なんだかこう順調だと気分が狂っちゃうな。そのうち悪いことが起きないと良いけれど。
今までの出来事を振り返るのに一区切りがついたので時計を見る、時間は…8時!?
まずい、まだ着替えすらしていない。
ここから急いで支度しても遅刻確定だ、調子いいとかほざいてた自分を殴りたい。
「今日の先生は優しい先生がいいな…とほほ」
やはり、人生はそう甘くはなかった。
「でさ!僕すーーっごい怒られたんだよ!?お前はいつもいつも身だしなみを整えない、それに加えて遅刻もやらかすか!毎日お前に怒る俺たちの気持ちも考えてくれって!」
時間はお昼12時
僕は朝あった出来事を一彩と藍良に話していた。
いつもなら1人でご飯を食べていたけれど、ユニットを組んでからは藍良と一彩とたまにマヨイさんとご飯を食べるようになったのだ。
それにしても…まさか僕と藍良が同じクラスだとは思わなかった。
普段まっったく人から話しかけられることなんてないから同じクラスなのに顔も名前も知らなかった。
「うへぇ〜、前々からあなたの噂は聞いてたけれどそんな感じなんだ。ウチの学校の先生怖い人多いのによくやるよねぇ?」
藍良は呆れたように僕に話した。
「悪いことしてないのに理不尽に怒られるなんて、怖くもなんともないよ。だって、僕悪いことしてないし。」
すると、一彩が
「そんなに怒られないようにするにはやっぱ、あなたがすかーと?を履いてこなければいいんじゃないかな?」
僕はその言葉にピキった
「やーだーね!僕のアイデンティティを取られてたまるか!だいたい何!?風紀を乱すような格好をしては行けないからダメって、僕女子生徒と同じ格好してるだけなのに、男だからだめなの!?」
「男だからってよりアイドルだからだめなのかも?ほら、ここって恋愛禁止でしょ?あなたは男の俺からみてもかわいいからさ、女の子って間違えるんだよねぇ。
ここの関係者ならすぐに男だってわかるけどさ、世間では確実に女って思われるじゃん。例えば、ここで一緒にご飯食べてても、男友達だけで食べてるんじゃなくて、女の子とアイドル科の生徒が一緒に食べてるって、世間では思われちゃうわけ。
そうなると、スキャンダルになっちゃう。僕達、もしかしたらアイドル活動できなくなっちゃうよ。」
…たしかに。藍良の言うことには説得力があった。
さっきまでの僕は自分の価値観だけを守ることだけを優先していた。でも、意見を押し通したら、目の前にいる大切な仲間、そして友達の夢を叶えられなくなってしまう。
もう、僕だけの問題じゃないんだ。
「…ごめん、ずっと自分中心で考えてた。2人に影響があること、考えてなかった。」
「難しい問題だよ。少なくとも、他に問題を多く抱えてる俺たちが解決出来ることじゃないよ。」
「あのぉ…。」
僕達は思わず後ろを振り返った。
そこには、床に這いつくばっているマヨイさんがいるじゃないか。
「ま、まママ、マヨさん!?いつからここに!?」
「あなたさんがスカートを絶対に履きたい、と叫んだところからですぅ…お邪魔でしたか?」
「邪魔じゃないよぉ?それで、どうしたの?」
すると、マヨイさんはおずおずと話し始めた。
「あなたさんが抱えている問題って、凄いシンプルだと思うんですぅ。学校の人だけでなく、たくさんの外の人にも顔を覚えて貰えたら、女性の格好をしていても、誤解されることは絶対ないはずです。」
僕と藍良は顔を見合った。
「マヨさん…天才じゃん。」
「僕たちALKALOIDがもっと有名になれば…僕は好きな格好をしても誰にも怒られることはないってことだよね!?」
僕たちの目標が決まった。
有名になって、誰にも文句を言われないようにする。
そうすれば、僕は好きな服を着てもいいんだ。
「そうと決まったら、活動をしないと!何か参加出来る仕事はあるかな。」
すると、ここまで口を開いていなかった一彩が手を挙げた。
「そういえば、みんなに見て欲しいものがあるんだ。」
一彩はスマホを持ち、ホールハンズを開く。
そこには、虹色のメールが輝いていた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!