第15話

【番外編】マヨさんの謎基準
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2025/05/24 13:14 更新
「藍良さぁぁぁん、おはようございますぅ♩」

「うぎゃぁっ!?」

…何度目のモーニングコールだろう。
僕たちの朝は藍良のびっくりした声で始まる。
僕が所属しているユニット『ALKALOID』は現在色々あって同じ部屋で共同生活をしている。
基本的にはみんな仲がいいし不満はないけれど問題がある。
それは、この特殊なモーニングコールだ。

数日過ごして気づき始めたことだけど、礼瀬マヨイ…マヨさんはどうやら男の子を異常に可愛がる一面があるみたい。
毎晩天井にへばりついては藍良や一彩と言ったいわゆる少年の寝顔を見ているらしい。
そして朝になってうとうとしながら目覚めた藍良の目の前には……顔を赤く染めているマヨさんがいて、大声を出す。
いつも早い時間にこの声が聞こえて起こされるのだけれど遅い時間に起きたい僕にはなかなかキツく、ぶっちゃけうるさいからやめてほしい。

いくら仲がいいと言ってもこれには限度がある。友人なら腹を括って言わなきゃいけない事があるだろう。
僕は意を決して朝について話をした。

「マヨさん!!!」

「はっ、はいぃ……!なんですか?」

「朝に藍良や一彩の顔を覗きに行くのやめてくれる!?僕遅くまで寝たい派なのにこれだと早めに起きちゃうじゃん!」

「遅くなるより早い方が健康にはいいですよ…?」

「そんなことはどうでもいいの!僕はぐっーーすり寝たいの!あと疑問なんだけどさ。」

「藍良とか一彩の寝顔は見に行くのになんで僕の所には来ないの?」

「…あなたさんは覗きに行って貰いたいんですか?」

「そうじゃない!けれど普通に疑問じゃん?
一緒に過ごしてきて何となく好みの子は把握したつもりなの。それでその好みに僕は当てはまってるのになんで狙われないのかな?って。」
僕の(魂の)叫びを聞いたマヨさんは眉をひそめた。そうして両者に少しの間沈黙が流れると意を決したかのようにマヨさんは話し出した。

「…こういう話はあまり本人の前ではしては行けないと思っているんですけどね。」

「簡潔に言うと、あなたさんには藍良さんや一彩さんのような目では見れないのです。
そう、最初は私だってかわいらしい男の子が増えた、という気持ちでいっぱいでしたよ。だけどあなたがここに入居して2日くらいでしょうか。私はいつものように寝顔を見に行きました。初めてあなたの寝顔を見る機会でした。見た時、私は今までに感じたことの無い罪悪感を持ったのです。
藍良さんや一彩さんは少年。男性の幼少期、つまり私と同じ同性です。馴染みを覚えますし多少手荒なことをしても許してくれます。」

「手荒なことって……」
僕はそう言いかけたところで口を閉じた。なんだか聞いてはいけないことを聞いてしまうような気がしたから。

幸い声量が足りなかったのか耳に届いていないマヨさんは続きを話した。

「ですが…あなたさんは見た目がかなり少女に近く…たとえ同性だと頭では認識していてもどうしても本能が異性だと認識してしまい、このままこの子を愛でてしまったら犯罪になってしまうのではないかと、思ってしまったのです。
あれから一度もあなたの寝顔を見たことはありません。そしてこれからも見ることはないでしょう。」

…思ったよりかなりおかしな話だった。
「つまり、僕が可愛すぎたからそういう目で見れないってこと?」

「うぅ……そうですね。」

「美人すぎると逆にそういう目で見れないってよく言うよね。わかるわかる。」
僕がそう言い終わったところで僕はある一つの方法を閃いた。

「僕のベットを覗くと罪悪感が生まれるから見れないんだよね?てことはさ……」

「僕が藍良たちのベットで寝れば覗かれずに済むってこと!?」
その夜

「んんキツイ〜!ヒロくんもうちょっと左に寄ってよ〜俺とヒメくんが近すぎて熱いよ〜!」

「どうしたものか…そうだ!この柵を壊せば少しスペースは広がるよ!」

「寮の備品壊さないで!!!僕たちまだお金ないんだから!」

僕達がワイワイとひとつのベットで争っている様子を巽さんとマヨさんが見ていた。

「俺たちの子供が楽しそうにしていますね。それにしてもあなたさんが突然『今日は藍良と一彩と一緒に寝たい!』と叫んだときはびっくりしましたよ。寂しかったんでしょうか。」

「そ、そうですね…。急にびっくりしました。」

僕が考えた安眠作戦はこうだ。
まずマヨさんは藍良と一彩の寝顔を毎晩見ている。
けれど僕のことは見れない。
そこで僕が2人と一緒に寝ればマヨさんは見たくても見れない相手がいるから諦める。
そうして僕はぐっすり寝られる。

「それにしても急に俺たちと一緒に寝たいなんて、突拍子もないこと言うよね。ま、ヒロくんほどじゃないけどさ。」

「それは褒められているのかな?多分、あなたは一緒に寝る相手がいなくて寂しかっただけだよ。僕もこうやって友達と寝ることはなかったから嬉しいよ。」

「それは同感。俺も少し憧れてたんだよね。友達とひとつの布団で寝ること。」
僕も同じ気持ちだった。2人を利用してしまう、という形になっちゃったけれど3人一緒に寝ることは全く嫌じゃなかった。
でもそれは巽さんマヨさんも同じで、みんないい人だし信頼出来る人たちだ。

僕はこの仲の良さがずっとずっと続いて欲しいと思ってる。だから、今日だけはちょっと長めに寝かせて欲しいな。


翌日、いつもとは遅い時間に巽さんは僕たちを起こしに来た。

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