━━━━━本番当日━━━━━
僕たちが撮影のために使っているスタジオではカメラマンさんやスタッフの他に、企業の社員さんやひと仕事終えた他のカメラマンさんなどが見学しに来ていた。
「瀬名泉も小さい頃からモデルやってるからもちろん上手いけどさ…あの横に立ってる女の子も上手くない?美男美女カップルって感じ」
「あー、知らないの?あの子女の子じゃないらしいよ。」
「まじっすか…?あの可愛さは女やめたくなりますね。」
「ほら、あそこ見なよ。みーんなあんたの話してる。昨日みっちり練習したおかげだねぇ。
あの時よりはだいぶマシになったんじゃない?」
僕の左隣にいる瀬名さんが嬉しそうに声をかけた。
「その節はお世話になりました。かなり改善されたと思いますよ。だけど…思ってる5倍はキツすぎました…。夢の中でもポージング練習させられる悪夢見てうなされましたよ。」
「あんたみたいなど素人がギリギリ俺の隣に立っても引き立て役になるようにしたんだよ?
普段だったら絶対にこんなことしないんだからねぇ!」
「おふたりとも撮影再開します!準備よろしくお願いします!」
引き立て役、とか色々嫌味を言ってくるけれど僕の事を思って色々してくれたんだよね、多分。僕としても瀬名さんにはスキル面でもメンタル面でも助けてもらったことが沢山あるし、いつか恩返ししたいな。
「撮影終わった〜〜〜!!!やっと帰れる!!」
撮影後は大変だった。終わるやいなやたくさんの人が僕と瀬名さんの周りに集まってきてやれサインをくれだのお仕事をしたいだのインスタフォローしたいだの…
僕はパニックになって慌ててたけれど瀬名さんは一つ一つ応えてたなあ…さすが先輩アイドルって感じ。
「おつかれ〜、飲み物買ってきたけれどあんたもいる?」
先に準備を済ませていた瀬名さんが来た。手にはお水とお茶と色んなジュース。
「俺は水を飲むから、それ以外の飲み物を選んでよね。」
「ありがとうございます!それじゃあ僕、なっちゃんオレンジいただきますね〜!」
僕はなっちゃんオレンジを手に取って口に運んだ。
いろんなオレンジジュースがあるけれど酸味控えめで甘みが強い、オレンジってよりかはみかんって呼び方の方が似合うこのジュースがオレンジジュースで1番好きなんだよね。
「改めてお疲れ様。あんたに泣き付かれた時はどうなる事かと思ったけれどどうにかなって良かった。さすが俺。」
「ほんとに何から何までありがとうございます…!今後どうやって恩を返そうか…。」
「だったらこれから定期的に俺のレッスン受けに来なよ。」
「えっ!?それって逆に負荷かけるだけじゃ?」
「別に?この仕事のおかげであんたの方に今後たくさんの仕事が来るだろうし?それで変な結果出されたら俺のせいにもなるじゃん。
それが嫌なだけ。せめてマシなど素人から半人前のモデルくらいにはさせてあげるよ。」
「素直じゃないな…。けれど嬉しいです!
僕もこれから売れるために先輩アイドルの事を知りたいと思っていたので!これからよろしくおねが━━━━━」
コンコン
その時、ノックの音がした。
誰だろう?企業さんからは着替える前に色々話をし終わったから違うと思うけれど…。
「あんたの方が扉に近いんだから開けてよ。」
はいはい、と僕が扉を開けたら…
「あなた〜〜!!!」
僕よりも少し小さめの体格の体がぶつかってきた。
藍良と巽さんが来てくれたみたいだ。
「撮影が無事終わった記念に来ちゃった!も〜ほんとにラブーい!あ!瀬名泉さん!瀬名さんもほんとに美の象徴!って感じでとってもかっこよかったです!」
「あ、藍良!バイトは!?」
「俺とタッツン先輩は少し早めに終わったからせっかくだしって事で来たんだ。だって前あんなに泣いてたんだもん。ちゃんと終わるか心配だったよ〜!」
「遠目からですがスタジオから見ていましたよ。1アイドルの撮影にあんなに人が集まるなんて…俺がソロで活動していた時よりも集まっていた人数が多かったですね。プレッシャーも沢山あった中でよく頑張りました。」
「藍良〜!巽さ〜ん!」
「へぇ〜、あんたがあなたと同じユニットの?」
「ほほほ、本物の瀬名泉に指さされてるよ〜!」
本物の瀬名泉を見た、と若干テンション高めな藍良を尻目に、巽さんは物腰柔らかに自己紹介をした。
「申し遅れました。風早巽と申します。
今回はうちのあなたにとても良くしてもらったと聞きました。本当にありがとうございます。」
「これからも色々と世話してあげるから、よろしくね。」
…僕と藍良は鳥肌が立って身を寄せあった。
「え、なんかタッツン先輩ピキってない?空気が重苦しいんだけど!?」
「何あの二人!?相性悪いのかな?」
「さて、二人とも。もうそろそろ夕飯の時間ですね。一彩さんももう帰っていると思いますし我々も帰るとしますか。」
「あ、はい!瀬名さん!まじで今回ありがとうございました!次もよろしくお願いします!」
瀬名さんはムスッとした顔でさよなら、と手を振ってくれた。
そうして僕はアイドルになって初めての仕事は大成功を収め、ちょっとだけ知名度をあげたのだ。
僕たちが寮へ帰る道中、その姿を見た2人組がいた。
「どうしたんすか燐音くん?なにか美味しい食べ物でも?」
「ちげぇよ。さっきびっくりするくらい可愛い女を見たんだよ。一目惚れだ。」
「燐音くんも恋に落ちることとかあるんすね、意外っす。」
「うっせぇな。燐音くんだって男の子なんだから恋だってするし色々するよ。
よし!今は可愛い女を見たから運気が上がってるはずだ!おいニキ!あと3万貸してくれ!5倍にして返すからよ!」
「嫌っすよ〜、僕もう寮へ帰って食べ物食べたいっす。」
「つべこべ言わずに金を貸せ!」











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。