第62話

見かけに寄らず言い方に寄らず
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2024/04/18 12:48

__ 潔 世一 side __
ヨ イ チ
 ど…… どぉした、鈴? 
成 り 凛
 め、めが 
ヨ イ チ
 うん、? 

成 り 凛
 かすんで、うまくみえない 
ヨ イ チ
 え 


確かに、凛の目は焦点を結んでない。

かくかく震えて、見えぬ世界に怯えている。

こ、れ、失明… とか、したら、
どうすんだよ。


サッカーは? 私生活は? 凛の、人生は??


そんなことは絶対ないはずなのに、嫌な予感が頭をよぎる。


それを振り払う様に頭をぶんぶん振っても、嫌な思考はこびり付いて簡単には落ちてくれない。
せめて、少しだけでもいいから払拭しようと凛に手を延ばす。

ヨ イ チ
 起き上がれるか? 
成 り 凛
 う、ん 
凛が俺の腕伝いによろよろと起き上がる姿は、見ているだけでも顔を顰めたくなるほど痛々しいものだった。
そして、立ち上がる。 と、すぐに肩を跳ねさせ蹲った。

ヨ イ チ
 ど、どぉしたんだ? 

成 り 凛
 っ…… 

しまった。 口も聞けないほどつらいのか?


雷 市
 … ふん、どーせザコなだけだろ。 そんなに痛かったでちゅかぁ? 
ヨ イ チ
 ちょ、雷市…… 
雷 市
 んなに目ぇ潤めてんだからよォ、さっさと治療してろザコ 
雷 市
 ザコが1人ぽっち抜けたくらいでなんも変わんねーよ 

ヨ イ チ
 ( 言い方…… ) 


雷市は見かけに寄らず言い方に寄らず、
存外いい奴なのだ。

今のだって実際は、

「 えっ… そんな痛いの?それ早く治療したほうが良くない?そっちのが絶対いいって。
 あ、もしかしてチームメイトと戦況が心配なのかな…? それなら大丈夫だよ!
 俺たちが何とかして勝つからね !!  ( 意訳 ) 」


である。




だがしかし、成り凛はそれを汲み取れず… ( )
成 り 凛
 うっ… るせえ、ザコじゃね、ぅっ 
反論しようとしたその時。


頭にズキッとした痛みが走り、視界が霞んでいたのが一転、白く眩くチカチカしてくる。

はっきり言おう、クソ気持ち悪くなる。

胃の辺りに重石が置かれて、ぐっと圧迫される、あの感じ。

成 り 凛
 んぷ……ぅ 
やべ、絵心さーーん! 絵心っちーーー!!! たちけてぇーーー!!!!!!


俺吐きそうーー!!!!

成 り 凛
 ぁ 
気持ち悪さから離脱したくて、立ちあがろうとして、

体の軸がブレて、頭から堕ちる。



そこで、俺の記憶は途絶えた。







_____ 目を覚ますと、薬品の独特な匂い漂う病院だったなんて
いったい いくらの人が信じてくれよう?

ぐっ、と起き上がると、俺の腕からブチブチと音を立てて点滴が外れた。

え?? 脆くね????

絵 心
 起きたか、成瀬鈴 
成 り 凛
 あぁ、はい… 
絵 心
 目は見えるか? 
成 り 凛
 … そういえば、ちゃんと見えます 

うぉー!! 治ってるっ!
すげぇーー!!
と大歓喜してしまいたいが、生憎今の俺はそんなテンション出来ない。

くっ、無念 (
絵 心
 そうか、それなら上々 
絵 心
 て事で入れば? 糸師冴 

成 り 凛
 え? 

成り凛

え?? ちょ、兄ちゃ来てるなんて聞いてないんだけど???




絵心

そりゃ言ってねーし





凛ーーー!!!!!!



雷市

ツンデレ(言葉選び皆無)



冴ちゃ

???

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