tn side
幼い頃から彼女が好きだった。というのも憧れに近かったイメージがある。御近所付き合いで仲良くなったあなたとは彼女のコミュニケーション力ですぐに仲良くなれたのは覚えている。
いつも笑みを浮かべて泣いてるところなんて1度も見たことがない。そんな彼女を気持ち悪いなんて言う奴もいたけど俺は彼女の笑顔が好きになった要因の1つであったからそんなことは思わなかった。
俺が小1であなたが小6、共に通学出来たのはその1年。だけど、彼女と共に通学できたその1年間に俺は満足げであった。何故かその時から彼女には何か惹かれるものがあったのである。
溜め息が反響する風呂場。シャワーで付着していた血を落とす。汚ならしい血がお湯と共に流れていった。因みにこれは俺の血ではない。そこらの雑魚を殴った時に付着してしまった血。
不良 なんてその響きは別に嫌ではなかった。むしろ誇らしく思える。
タオルで濡れた髪を拭きながら風呂から上がり、リビングに戻るとシャオロンとコネシマがバタバタと激しく鬼ごっこをしていた。クッションを投げ合ったり、机やテレビを障害物としてやってる鬼ごっこ。
家の持ち主こと、あなたの方を見ればニコニコと笑みを浮かべながら2人を見守っている。もしかしたら何か物が壊れるかもしれないというのに、まるで子供を見守るように見ていた。
ははっ と俺の突っ込みに笑って返してくれるあなた。その後に身長差があるが、あなたは背伸びして俺の頭を優しく撫でてくれる。
悔しかった。彼女にとって、俺はれっきとした男と見られていないようで。あなたに頭を撫でて貰うのは大好き。やけど、子供扱いされるのは嫌いである。
台所に立つあなたは俺のラーメンを用意しながら口角を上げて此方を見てくれる。そんなゆるゆるな笑顔はどうしても 「 好き 」 の気持ちが溢れてしまう俺はちょろいのだろうか。
あなたに向かって言うと、いち早く反応してくる狂犬二匹。無視してあなたを見る。すると少し驚いた表情を浮かべた後、 にまっ と笑った。
けらけら笑うあなたはきっと俺の気持ちに気づいていない。嗚呼、なんて狡い人なのだろうか。
今まで何度かこの気持ちを伝えたのに彼女には一度も伝わったことがない。いつになったら受け入れてくれるのだろう。俺も男、いつまでもお利口でおれる子供やない。
机の上には白い皿があり、そこの中には大量のカラフルなグミがのっていた。何やこのグミの山………、シャオロンとコネシマが何か取り合いしとったのはこれのせいか。
1つ取って頬張った。反発して噛みごたえのあるグミ。強く噛めば、中からジュレのようなものが舌にのってくる。それは苺味、甘くて…いや、俺にとっては甘過ぎてそのグミは俺の口に受け入れがたい物だった。固いグミは未だに俺の口に残っている。
ぐにっ
また反発。俺があなたに伝えてもこんな風に伝えた愛は返却される。いつになったら彼女は俺の気持ちを受け止めてくれるのだろうか。
【 今日のおやつ : グミ 】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。