第7話

クッキー
4,395
2024/03/15 06:52
  sho side
 
ハンバーグを食べ終わった俺ら。一体何杯ご飯をお代わりしたことやら、腹はいっぱいである。俺はその場で寝転がった。
(なまえ)
あなた
~♪︎
あなたの鼻歌が台所で聴こえてきた。シンクの水が流れる音がする。いつの間にか机の上から消えていた空になった食器はあなたの手元にあった。
それにしても旨かった。人生で初めてかもしれない、あんなに旨いハンバーグ。食べること自体とても好きっていう訳でもない俺はこの際好きになりそうな位美味しかった。
会って初めましての俺を、不良の俺を簡単に家に上げて、警戒心ってもんが無いんかな。無防備過ぎやろ。内心そんな文句だらけだったが、正直悪い気はしていない。
kn
ぅまかった…
(なまえ)
あなた
ホント?良かった~!
あ、この前買ってきたプリンあるけどあげる~!
sho
は?!シッマだけズルいわっ!!
俺も!美味しかったッ!!!
(なまえ)
あなた
ははっ、だいじょーぶ。シャオロン君のプリンもあるよ~。
にひっ と悪戯をした子供のように笑うあなた。身なりは社会人だが、この性格は本当に社会人か疑ってしまう。そこがあなたの魅力なんやろうな。
渡されたプリンは市販の物で、手作りじゃないのが少し残念。普通に旨いが、やはりあなたの作ったのはもっと美味しく感じるのだろうと思ってしまう。
あなたの作ったプリン食べたい……他にもコロッケとかカレーとか作って欲しい………きっと…ぃや、絶対美味しいんやろな…。
kn
何考えとるん。エロ本なら買ってやらんぞ。
sho
誰がいるか、んなモン。ゾムに買ってやったら?アイツエロ小僧やし。
プリンを頬張るコネシマ。勢い良く頬張ったのか、頬にプリンの欠片のようなものが付いていた。何となく癪だったので、言及しないでおく。
プリンを食べる手を進めているとコネシマの頬に付いたプリンにあなたが気づいたようで、クスクスと笑っていた。
(なまえ)
あなた
コネシマくん、また付いてるよ。
おにぎりの時といい……沢山付けるね。
ティッシュで優しくコネシマの頬をなぞるように取っ手あげるあなた。コネシマはその彼女の行動に頬を赤らめていた。
2人の甘い空間、それを見て何だか気分が悪くなる。だが、見た感じ2人は付き合っていない。きっとコネシマの一方通行の恋なのだろう。そう思えば何だかホッとした気持ちと2人の距離が近いことにモヤモヤとした気持ちが胸にある。
sho
(…何か…嫌やなぁ…)
これが何の気持ちかまだ俺には全く分からなかった。
 
 
(なまえ)
あなた
其れじゃあ気を付けてお家帰りなよ?
あなたは2人を見送る為に玄関で手を振った。話す声色は小さい子に話し掛けるような柔らかい声色。コネシマはその声色に眉をしかめた。
kn
あなたって俺らのことどう見えとんねん。
(なまえ)
あなた
え、んー…私の料理美味しく食べてくれる可愛い子!
kn
誰が可愛いじゃい。
キレキレな突っ込みをかますコネシマに笑うあなた。最初の頃と比べ、あなたの前ではコネシマは段々と口数が増えてきている。それが嬉しいのかあなたはまた笑った。
シャオロンはコネシマよりあなたから少し離れていた。これは一体何の距離か、それはきっと本人も分かっちゃいない。
kn
んじゃ、またな。
(なまえ)
あなた
うん、またねぇ。
ヒラリ と笑顔であなたは手を振った。コネシマはシャオロンに 「 先行っとくで 」 と言って背を向け歩き始めた。残されたシャオロンは躊躇いながらあなたの方を見た。
あなたはシャオロンの方に近づいた。相変わらず笑顔のままである。
(なまえ)
あなた
どーしたの?
明るい声色、今の暗い空とは真反対に彼女の心は明るかった。シャオロンは数秒俯いて黙り込んだ後、おずおずと声を発した。
sho
あ、のさ……またここあなたの家来てええ?
sho
あなたの料理すっごい旨くてまた食いたいから…駄目?
自分が女っぽい可愛い顔しているのを自覚しているのか、 うるうる とした瞳で上目遣いになりながら見つめた。まるで叱られた子犬ポメラニアンのようである。
あなたは驚いた表情を浮かべた。まさかそんなこと言われると思っていなかったのか、 ポカン としている。
(なまえ)
あなた
…ふふっ、そんな風に思ってくれたんだぁ。めちゃくちゃ嬉しぃな。
照れ臭そうにはにかむあなた、そんな彼女を見てシャオロンは心臓が高鳴った。幸い、時間帯的に暗かった為、彼の赤く染まった顔は彼女には気付かれていない。
(なまえ)
あなた
…あ、そーだ。シャオロンくん。ちょっと待っててくれない?
sho
え?…うん…。
あなたは バタバタ と忙しなく家に入っていった。何事だろうかとシャオロンは頭にクエスチョンマークを浮かばせていると直ぐにあなたは戻ってきた。
手には何か小さな袋を持っている。その袋をシャオロンに押し付けるようにあなたは彼の胸に軽く当てた。それは可愛くラッピングされたクッキーであった。
sho
これって…?
(なまえ)
あなた
んふっ、手作りクッキーだよ。これあげる。
(なまえ)
あなた
お近づきの印ぃ~。
にま と笑うあなた。シャオロンはそんなあなたの言動を愛らしく感じていた。渡されたクッキー、彼はニヤけるのを必死に顔の筋肉で抑えていた。
(なまえ)
あなた
あ、…これ、コネシマくんには内緒ね。んじゃっ!
あなたはシャオロンの耳に口を近づけそう呟いて、家に戻っていった。ガチャリ とドアの音が鳴った のと同時にシャオロンは大きく溜め息をしてその場にしゃがみこんだ。
sho
…ズルイわ、ホンマに。
その顔は熟した林檎のようになっている。パタパタ と自身の熱を冷ますように手で仰ぐシャオロン。やけくそになったようにラッピングされているクッキーを取り出して放り込んだ。
クッキーはサクサクは勿論、舌触りは最高。噛めば噛む程ホロホロと舌の上で崩れてゆき、最終的には溶けて彼の胃に到着する。砂糖は控えめなのかそこまで甘い訳ではない。その代わりチョコやイチゴ等、味が付いており彼の口の中では味のオンパレードである。
sho
…ぅま…
美味しそうにはにかむシャオロンは機嫌が良さそうに 立ち上がりコネシマの方に向かい始める。 " 自分だけ " という特別感のあるクッキー。彼はきっと家に帰ってはにかみながら食すのだろう。
 
コトン
 
シャオロンは知らぬ間に袋の中にあるイチゴのクッキーを一枚落としていた。恋は苺のように甘くない。いつの間にかシャオロンはあなたに堕ちていた。
 
 【 今日のおやつ : クッキー 】
 
 
  リクエスト有難う御座います ~ ❕
  少しずつリクエスト消化していくので 、
  楽しみにしといてくださいな ❕
 

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