思わず、唖然としてしまった。
本当に、りうら本人なのか、
前提すらも否定したくなっていた。
腹の底から出た本音だった。
りうらの言葉の意味、表すことは恐らく
〝俺がりうらを裏切った〟ということだろう。
さぁ、ここでクエスチョン。
先刻からこの世界に鑑賞しているだけだと
どうも情報が足りない。
そのせいだろう。
俺の沈黙が、りうらに〝肯定〟させた。
後ろ姿を見て、きっとかなりのことをしたんだろう。
そう、思うしか無かった。
さっきまで 〝誰もいなかった〟筈の後ろに
突如、お喋りなぬいぐるみが俺を見据えていた。
〝洗脳〟という、意味ありげな言葉を告げて。
理解出来なかった。
非現実的過ぎる事が、俺の目の前に起きていた。
子供騙しだったなら、
とても面白いだろうと思った。
夢だったら良かったのに。
〝洗脳〟なんて、どっかのSFかよ。
悪夢なら、薙ぎ払っていつもの毎日に戻りたい。
みんなと、また笑いたい。
脳裏に描く六人の絆が、
嘘だって感じてしまう前に、戻なければいけない。
何も手がかりが無いよりは、
このぬいぐるみに乗る方が良いと思う。
だから、この少し古びたぬいぐるみと
少しの間、隣で笑うことにした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。